わたしのせい ページ22
その日の晩のこと。
旅館に戻ってからはいつものようにセカイへ報告に行った司達だったが、オリジナルのAがシブヤへ帰ってくることを渋っているという旨を伝えると、セカイのAは「向こうのわたしがごめんなさい！！」と謝り倒していた。
『本当にごめんね……』
「まだ言ってるのか」
『こんなんじゃ足りないくらいだよ……！』
日が沈んで、入浴を済ませて布団を敷いた現在でさえ、司のスマートフォンで申し訳なさそうに項垂れている。
『……昼間、考えてたんだ』
「何をだ？」
『あっちのわたしが記憶喪失なのって、わたしのせいなのかも――って』
要領を得ない言葉に首を傾げると、彼女は続けた。
『あっちのわたしがなくした記憶を、わたしは全部持ってる。わたしが幻を見る度に、あっちの――本物のわたしは苦しめられてた。本当はわたし、存在しちゃいけなかったんだよ』
「……考えすぎだ。悪い方向ばかりに考えてしまうのは、お前の悪い癖――」
「断定はしたくないけど、Aくんの言ってることは僕も思っていたんだ」
遮るように発せられた類の声に振り返ると、彼は難しい顔をして腕を組んでいた。
「機材のメンテナンスは済んだのか」
「たった今終えたところだよ。……それと司くん、これは君が持っておいた方がいい」
そう言って類が差し出してきたのは、いつの日かセカイの公園で見つけた短刀だった。
「……どういう了見だ？」
Aの表情に恐怖が滲んでいるのを見て取った司が、類からスマホを遠ざけながら尋ねる。
「君ならきっと、この意味がわかるはずだ」
「わからないから訊いているんだろう」
「……この短刀は、彼女を消すためにある」
「なんだと！？」
類の言葉に、思わず声を上げる。
しかし類は至極冷静なままで、淡々と言葉を続けた。
「彼女を作ったのが司くんなんだから、消すかどうかを決めるのは司くん次第だよ。――邪魔したね、おやすみ」
「待て、類！」
呼び止める司を無視して、類は部屋を出ていってしまった。
＊あけましておめでとうございます、やっとこさ佳境です。いつまで宣伝公演しとんねんというツッコミは受け付けておりません(笑)司くんバナーの羽称号が欲しくてプロセカざんまいだったのでお正月とけました。9日公演のｾｶﾗｲ観るのがご褒美
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作者名：あきいろ | 作成日時：2022年9月18日 8時
