住む場所 ページ35
「Aちゃん、いつ退院できるの？」
「二週間後だと言っていた。元気だから入院することないのにとゴネていたな……」
日課となっていたお見舞いに向かうため、えむ達と病院への道を歩きながら、司は答えた。
不服そうに窓の外を見るAを思い出して、人知れず苦笑いをする。
「退院したら、もっとたくさん遊びたいね！ フェニックスワンダーランドには絶っっ対来て欲しいし、お友達を紹介したりもしたい！」
「ワンダーステージでのショー、見て欲しいよね」
えむと寧々が話すのを聞いていた類が口を開く。
「退院後といえば、彼女の住む場所についてはどうするつもりだい？ 元々の住居はもう使えないだろうし、一人暮らしさせるわけにもいかないだろう」
話を聞いて、少しの間考える素振りを見せた後、司は答える。
「――うちに住まわせる」
「……え！？」
大胆な提案に、三人とも驚いた声を上げた。特に寧々の反応は大きく、信じられないという表情をしている。
「Aの意思もだけど、ご家族の許可とかはどうするわけ！？ 司の一存で勝手に決められることじゃないでしょ」
「Aのことだと話せば、両親も咲希も必ず受け入れてくれるはずだ。それに、今は一刻でも早く彼女を安心させてやりたいんだ。今誰よりも不安なのはAだろうからな」
「それは、わかるけど……」
寧々は渋っているようだった。司のことを信頼していないわけではないが、やはり突然すぎるという気持ちがあるようだ。
「フフ、君ならそう言うと思ったよ。いいんじゃないかな、彼女にも当てがあるわけじゃなさそうだし」
「あたしも大賛成だよっ！ 司くんや咲希ちゃんとなら、Aちゃんも安心して暮らせると思う！」
類とえむは司の提案に賛成のようだ。寧々はまだ迷っている様子だが、やがて小さく息をつく。
「……Aはいつも通り、申し訳ないって渋りそうだけどね」
「その時は、また説得すれば良いだけだ」
そんな会話をしながら歩いているうちに、病院へと辿り着く。
司達は受付に寄って面会許可証を受け取り、Aがいる病室へと向かった。
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作者名：あきいろ | 作成日時：2022年9月18日 8時
