ヒント ページ15
「そうなん……だ。せっかく司くんが見つけてくれたのにきちんとお礼も言えないなんて、わたしってば本当ダメだね……」
そう言って自嘲気味に笑うAを見て、司の心は痛んだ。しかし、だからといってこのままでいいはずがない。
「――大丈夫だ。オレは諦めない。必ずお前の記憶を取り戻してみせる！！」
「さっすが司くん！ でも、どうやって？」
「うぐっ……そ、それは」
えむの純粋な疑問に、言葉を詰まらせる。問題はそこなのだ。
「なんかヒントとかないのかな……」
寧々の呟きに、一同考え込む。そんなとき、ふと思い出したようにメイコが顔を上げた。
「そういえば、Aちゃんがセカイで見てた幻？ はどうなったの？ 捜すための目安にしていたのよね」
「それなら存分に活躍してくれたが――幻といえばだな、セカイでAが幻を見る度に向こうのAが頭痛に襲われていたらしいぞ。どういうことなんだ？」
そこまで言って、司が説明を求めるように類の方を見る。すると彼はその話題が出るのを待っていましたと言わんばかりに口を開いた。
「幻を見ている間は現実世界のAくんに、セカイのAくんの人格が乗り移るだろう？ その間、行き場をなくした向こう側の彼女が影響を受けざるをえないというわけだよ」
「それじゃいつか『思い出したい』って言ってたのは、あっちのAが記憶を取り戻したくて苦しんでいたからか……」
納得した様子の司に、えむが首を傾げる。
「思い出したい？」
「あー、それはね」
司と類以外に向けて、寧々が補足の説明をした。
それは、Aが悪夢のような幻を見て倒れてしまったあの時、意識を失った状態の彼女の口から発された言葉。
あの時は現実世界のAと感覚が繋がっているのではないかと推察したが、どうやら間違っていなかったらしい。
「それじゃ、向こうのわたしを苦しめてたのはわたしだった――ってこと……？」
「えー！ でも、こっちのAちゃんもじゅうぶん苦しんでたと思うな！」
愕然とするAにレンが必死に声をかける。
「レンくん……ありがとう」
なんとか笑みを浮かべようとするものの上手くいかず、Aは困ったような表情のまま目を伏せた。
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作者名：あきいろ | 作成日時：2022年9月18日 8時
