片目が無くてもバレーが好きだ【ハイキュー】

ずるい子 ページ36

菅原side

すっかりお手上げ状態になった俺は、藁にもすがる思いで岸廻に連絡した。

渋ったり、内容を詳しく聞かれると思ってたから、二つ返事でオッケーが出たときはかなり驚いたけど。



菅「……」

待ち合わせ場所に早めに着き、岸廻の到着を待つ。

やっぱりあの子がいるな……気まずい。

そんなことを考えている間に時間は過ぎ、



「お待たせしました〜」



岸廻が到着した。

いつもと違って、ちゃんとメイクしてるし、髪の毛も巻いて、服も華やかすぎず大人っぽい感じで……

左目の眼帯がなければ、誰だか分からないんじゃないかって程に見違えていた。

前から思ってたけど、岸廻は普通に……いやめっちゃ可愛い。顔が。

でも性格がアレだから、変に異性として意識することなんてほぼほぼない。

しかし、こう着飾って女性らしくなると、なんか調子狂うっていうか……



「孝支くん？どーした？」

カップルのフリとはいえ、名前で呼ばれるうえタメ口……

菅「いや、ちょっとバレーのこと考えてた」

「デートもどきのときもバレーのことを……偉い……」

菅「ふふっ……ありがとな」

自分の感情を誤魔化すように、岸廻の頭を撫でた。



何となくの雰囲気で分かるけど、岸廻は恋愛を避けてる。

でも、人と仲良くなりたいとは思ってる。

それで今の、

『恋愛対象にはならないが親しい関係』

を保ってるんだと思う。

俺で気付くんだから、恐らく月島とか縁下とか、もしかしたら大地とかも知ってそう。



でも今日ぐらい、今日ぐらいは許してくれ。









菅「……今日はありがとな！めっちゃ助かった……！」

「いえいえ、タダ飯食えて幸せでした」

ニヤニヤと口角を上げて、意地悪そうに笑う彼女。

菅「普段マネの仕事ありがと、ってことで」

「おっ、じゃこれからも頑張るんでまた奢って下さいね！」

菅「今度は普通に外食しよーな！」

「じゃあ焼肉！」

菅「少しは遠慮しなさい」

サラッと次の機会を作れたことに、内心テンションが上がる。

「じゃあまた明日！」

岸廻は俺と繋いでいた手を離し、帰ろうとする。

その手を咄嗟に掴み、

「菅原さ……」



チュッ



菅「……気をつけて帰れよ」

彼女の額にキスを落としたが、



チュッ



手の甲にキスされ、固まる俺。

「先輩も気をつけて下さいね？」

やり返してやった、とばかりに岸廻は満足そうに去っていった。



菅「それはズルいわぁ…………」

苦手なものその1→←戦略的得策

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す