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39.たった三文字だったのに ページ9

謝ろうとしたのだ。何度も、何回も。
ただ、心の準備ができなかっただけで。そのせいでずるずると時間を引きずって、小学生でも言える三文字が、伝えられなかった。

こんなことになるのなら、もっと早くに伝えておくべきだったのに。





パラ……パラ……と紙が捲れる音だけが部屋に響く。
彼の手元には好きなラノベの最新刊。視線の先には縦に列を作る文字。隣のページは、このラノベの主人公とヒロインのツーショット。いつもなら心踊るそんな時間も、どうやら今は気分が上がるどころか下がる一方。どうにもこうにもイラついてしょうがない。
本の内容が少しも頭に入ってきていないのがその証拠だ。


「……この前からずっとあの調子だよな、兄ちゃん」

「当たり前だろ。A姉と喧嘩したんだから。……連絡取ったんだろ? どうだったんだよ」

「どうもこうもねぇよ……。姉ちゃん、しばらくこっち来ねぇって」

「はあ……。まさかここまで長く続くなんてなぁ……」


テーブルを挟んで向かい合わせに座り我らが兄に聞こえない音量でひそひそ話す二郎と三郎が肩を落とした。
今回の件の一番の被害者である彼ら。その表情は当然ながら明るいものではない。


「どうにかしろよ二郎」

「はっ……!? 無茶言うなよ! つか、どーしろっつーんだよっ」

「それぐらい自分で考えろよ! ああそうか、お前の頭に詰まってるのは脳みそなんて高度なものじゃないから考えるってこともできないのか」

「ンだと三郎!」

「なんだよ低脳!」


バンッ!
突然部屋に響いたその音に二人揃って肩を跳ねさせた。音のした方を見れば、そこには先程同様ソファーに座る一郎の背中。
さっきと比べて違う点は、どう考えても不機嫌差が増している点だ。

♪→←最初で最後、一度きりの。



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ユズヒ(プロフ) - 月華姫さん» お久しぶりです!お元気にしていましたか?また読んでくださったんですね!ありがとうございます!!先程ちょこっと更新しましたので、本当に少しなんですけど、ぜひお読み頂ければ嬉しいです…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ニケさん» コメントありがとうございますお返事大変遅くなってしまいすみません!!!一年!?前!!??本当に申し訳ないです…。気力が絶賛お亡くなりで続きを全く更新していなかったのですが、先程ちょこっと更新してきましたので、ぜひお読み頂ければと思います…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
月華姫 - お久しぶりです!久しぶりに1話から全部読みましたが世界観に、また引き込まれました!!此れからも応援しています(`・ω・´)bではまたっ♪ (2021年9月6日 16時) (レス) id: 8f77e3b2d4 (このIDを非表示/違反報告)
ニケ(プロフ) - 凄い面白いです!最後感動しました!私も何回か読み返しました!コメント遅くなってすみません。あつかましいですが、是非続きが読みたいです!応援しています! (2020年4月27日 20時) (レス) id: e4acd479d7 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - sioさん» コメントありがとうございます!!ひえええ読み返していただけてるとは本当に嬉しい限りです……! 最近更新できてなくてすみません…! もう少しで!更新できるかと思いますので……!! (2019年12月1日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年3月27日 5時

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