♪ ページ6
「ありがとうございましたー」
からんからん、と可愛い音と共に閉まるドア。片手にはケーキが入った可愛らしいデザインのマークが描かれた箱が、同じマークを持つビニールの袋に収められている。
……買ってしまった。
ご丁寧に、しっかり四人分のケーキ。あの三人と一緒に食べる為のケーキ。
「…………不可抗力です」
ケーキが美味しそうなのが悪い。そんで、頭をチラつく三人が悪い。だって四人で食べろって言われてるようなもんじゃん! 誰にって神様的ななにかに!!
そう自分と誰とも知らない誰かに言い聞かせてズンズンと歩いて行く。
気づけば頭の中はあの三人のことでいっぱいで。でも、なんであの時一郎が怒っていたのかはやっぱりわからなかった。
なんで怒ってるのかと聞いても教えてくれなかったし。今なら、聞いたら教えてくれるだろうか。
パキッ。ギッ、ギシッ。
「……ほんと、なんで怒ってたんだろ」
ギッ、ギィ……ピシッ。
「あんなに怒ること、今までなかったのになぁ」
ギィ……ギィィ……。
「うーん、わからん……。っ、ぅわっ!」
バキンッ!!
突然の強風に体がよろめいてたたらを踏んだ。なんだなんだいきなり。びっくりしたぁ……。
あ、ケーキ! 待ってケーキ無事!?
そう思って慌てて確認しようとしたら、どこかから聞こえた叫び声。
え、と箱に向けていた顔を持ち上げると、なにやら自分に影がかかっていることに気がついた。
……この感じを、私は知っている。
視線が上に行くのにつられるように、顔も上を向く。
ああ困ったな。ディビジョンバトルもまだなんだからマイクの調整だって必要になるだろうし、夢野さんが今書いてるっていう新作だってまだ読んでないしせっかくできた帝統さんっていう大事な友達ともまだまだ遊び足りない。理鶯さんのご飯だってまだ食べたいし、私が作ったケーキを食べたいって言ってくれた独歩さんと一二三さんに差し入れだってしたかった。入間さんが今度お茶を奢ってくれるって言ってくれた。寂雷さんにまた料理を作って欲しいって頼まれたのに。乱数さんとまたお泊まり会しようって無理矢理だったけど約束したのに。左馬刻さんにこの前のお礼だってしてないのに。
せっかく、四人で食べようと思ってケーキを買ったのに。それに、
私、まだ一郎と仲直りしてないのに。
私目掛けて降ってくる大きな看板を見つめながら、私は最後にそう思ったのだ。
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しにたくない。
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ユズヒ(プロフ) - 月華姫さん» お久しぶりです!お元気にしていましたか?また読んでくださったんですね!ありがとうございます!!先程ちょこっと更新しましたので、本当に少しなんですけど、ぜひお読み頂ければ嬉しいです…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ニケさん» コメントありがとうございますお返事大変遅くなってしまいすみません!!!一年!?前!!??本当に申し訳ないです…。気力が絶賛お亡くなりで続きを全く更新していなかったのですが、先程ちょこっと更新してきましたので、ぜひお読み頂ければと思います…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
月華姫 - お久しぶりです!久しぶりに1話から全部読みましたが世界観に、また引き込まれました!!此れからも応援しています(`・ω・´)bではまたっ♪ (2021年9月6日 16時) (レス) id: 8f77e3b2d4 (このIDを非表示/違反報告)
ニケ(プロフ) - 凄い面白いです!最後感動しました!私も何回か読み返しました!コメント遅くなってすみません。あつかましいですが、是非続きが読みたいです!応援しています! (2020年4月27日 20時) (レス) id: e4acd479d7 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - sioさん» コメントありがとうございます!!ひえええ読み返していただけてるとは本当に嬉しい限りです……! 最近更新できてなくてすみません…! もう少しで!更新できるかと思いますので……!! (2019年12月1日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年3月27日 5時