♪ ページ38
ぴくっ。
「っ!! ……A?」
握っていた手が、指が、小さく動いた。バッと顔を上げ彼女の顔を見る。
もしかして、もしかしてもしかして。
数秒の間の後。ふるりと長い睫毛が揺れ、そしてゆっくりと、瞼が持ち上がった。ぼんやりとした菫色は虚空を見つめ、その視線が自分に絡む。
「……ぃち、ろ……?」
「あっ……あぁあああ……!」
名前を呼ばれて、それが現実だとやっと認識できた。ガバリと抱き締めた体はやっぱり細くて、潰してしまいそうだった。
「いだっ……いた、いたいいたい、一郎、いたいって……」
「ごめっ、俺、ごめん……! ごめん……!」
声がどんどん掠れていく。涙が溢れてぼたぼたと零れた。腕の中で苦しげな声を上げていたAの腕が、自分の背中と頭に回る。
ああ、温かい。
「ぇー、なんか一郎、私に謝ることしたっけ……したな。いやしたわしてたわ」
細い指が自分の髪を撫でながらなんだか呆れたような声でAに言われて、もう一度、ごめんと口にした。
「あっはは、いいよぉ。許したげる。けど、理由は聞かせてね」
ぐすぐすと鼻を鳴らし、みっともなく泣き喚く。よしよし、とそんな俺の背中と頭を撫でるAの手に更に安堵を覚えてまた涙が零れた。
「遅くなってごめんね。ただいま、一郎」
優しい声が耳を震わせる。ああ、ああ、その声をずっと聞きたかったんだ。
おかえり、A。
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ユズヒ(プロフ) - 月華姫さん» お久しぶりです!お元気にしていましたか?また読んでくださったんですね!ありがとうございます!!先程ちょこっと更新しましたので、本当に少しなんですけど、ぜひお読み頂ければ嬉しいです…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ニケさん» コメントありがとうございますお返事大変遅くなってしまいすみません!!!一年!?前!!??本当に申し訳ないです…。気力が絶賛お亡くなりで続きを全く更新していなかったのですが、先程ちょこっと更新してきましたので、ぜひお読み頂ければと思います…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
月華姫 - お久しぶりです!久しぶりに1話から全部読みましたが世界観に、また引き込まれました!!此れからも応援しています(`・ω・´)bではまたっ♪ (2021年9月6日 16時) (レス) id: 8f77e3b2d4 (このIDを非表示/違反報告)
ニケ(プロフ) - 凄い面白いです!最後感動しました!私も何回か読み返しました!コメント遅くなってすみません。あつかましいですが、是非続きが読みたいです!応援しています! (2020年4月27日 20時) (レス) id: e4acd479d7 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - sioさん» コメントありがとうございます!!ひえええ読み返していただけてるとは本当に嬉しい限りです……! 最近更新できてなくてすみません…! もう少しで!更新できるかと思いますので……!! (2019年12月1日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年3月27日 5時