【ヒプノシスマイク】大人びた幼馴染 Last Album

♪ ページ22

「おーいA、大丈夫かー？」


ひょこり、脱衣所に顔を出す。しまった、先に声がけした方がよかったか……？
なんて心配は杞憂に終わった。なんだ、風呂から上がってんじゃねぇか。服だって着てるし……なんかあの服見たことあるな。

……あれ、俺のパーカーじゃねぇか？ 間違いなく俺のパーカー、だよ、な……？ そう考えて、飲み込むまでに約1秒。
理解した瞬間ぶわりと顔が熱を持った。まて、まてまてまてまて。何やってんだこいつ。何やってんだ……！？ ぐるぐる混乱する頭と驚きのあまり動かない体。それに気づきもしないこいつは、俺のパーカーを着たAは。鏡の前でだぼだぼの袖を使って顔の下半分を覆ったまま、


「……一郎の匂いがする」


そんな爆弾発言をかましてきた。いやどう考えても独り言のそれなんだろうが、声色が駄目だ。なんでそんなうっとりした声で目で言うんだなんだどうしたなんなんだ。
未だに顔は熱を持ったまま、心臓はばくばくと脈打っている。
そうして、そんな感じで動けない俺の視界の中で、Aはゆるりと視線を鏡に向けた。と同時に固まるそいつ。ぎぎぎ、とまるでブリキの人形みたいにぎこちなくこっちを向いたAは、やっと俺の存在に気づいたらしい。

目があって数秒。今度はAが顔を赤らめる番だった。


「なっ、いちっ、一郎！？ ま、ちょ、いつからそこ、にっ」


これでもかと顔を赤くしたAは思わずといったようにこっちに体を向けて慌てたように言葉を零した。待て、それはまずい。こっちを向くのはまずい。
ばっと勢いよく視線を外して目の前の光景から目をそらす。だってこれは本当によくない。なんでこいつパーカーの前閉めてねぇんだ……！？

♪→←♪

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す