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「こ、う、い、う、時は、っと」


携帯を取り出し、その細い指を液晶に滑らせてタップする。耳に当てて間を空けず鳴ったコール音の後に、電話をかけた相手の声が聞こえた。


「あ、もしもし一郎〜? うんそう僕だよっ! ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかなぁ……って、どしたの一郎。なんか暗くない?」


電話の相手の声はなにやら暗かった。どうしたのだろう、と浮かんだ疑問を投げかけると、彼は「別に……」とこれまた暗い声で返事が返ってきた。
ふぅん? とどこか納得していない様子で声を返した乱数は、「一郎がいいならいいけど」と一言添えて本題を持ち出す。


「そうそう、ところでさ、Aのことなんだけど」


不意に、電話の向こうの空気が凍りついた気がした。


「今どうしてるの? 一緒にいる? なんでかは分かんないんだけどAと連絡がつかなくてね? 一郎経由なら連絡つくかな、って……。ねえ待って一郎。黙り込んでどうしたの?」


いつもならなにかしらの反応を返してくる彼がなにも言ってこないことを不審に思い、少し口調が鋭くなってしまった。
いつもの彼じゃない。何かがおかしい。そう辿り着いた思考は、騒ぐ二人の声をシャットアウトし電話の声に神経を集中させた。

そして。
長いような、短いような、なんだか重たい間を置いて電話の声が口にした言葉に、飴村乱数はその飴玉のような透き通った瞳が溢れんばかりに目を見開いた。唇が震える感覚がして、頭からつま先に血液が下がっていく音がする。
まるで、突然後ろから冷水をかけられたように体が体温を失っていく。


「ぇ……A、が……?」


その掠れた声は、騒ぐ二人の動きを止めた。

♪→←40.素敵に残酷な現実を君に



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ユズヒ(プロフ) - 月華姫さん» お久しぶりです!お元気にしていましたか?また読んでくださったんですね!ありがとうございます!!先程ちょこっと更新しましたので、本当に少しなんですけど、ぜひお読み頂ければ嬉しいです…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ニケさん» コメントありがとうございますお返事大変遅くなってしまいすみません!!!一年!?前!!??本当に申し訳ないです…。気力が絶賛お亡くなりで続きを全く更新していなかったのですが、先程ちょこっと更新してきましたので、ぜひお読み頂ければと思います…! (2021年9月6日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
月華姫 - お久しぶりです!久しぶりに1話から全部読みましたが世界観に、また引き込まれました!!此れからも応援しています(`・ω・´)bではまたっ♪ (2021年9月6日 16時) (レス) id: 8f77e3b2d4 (このIDを非表示/違反報告)
ニケ(プロフ) - 凄い面白いです!最後感動しました!私も何回か読み返しました!コメント遅くなってすみません。あつかましいですが、是非続きが読みたいです!応援しています! (2020年4月27日 20時) (レス) id: e4acd479d7 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - sioさん» コメントありがとうございます!!ひえええ読み返していただけてるとは本当に嬉しい限りです……! 最近更新できてなくてすみません…! もう少しで!更新できるかと思いますので……!! (2019年12月1日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年3月27日 5時

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