よんじゅうにわ ページ44
「…すまなかった。おれも言おうと思ったんだ。でも弱みを見せたくなかった」
「…本当に見たんですか、やな人です」
「お前なら受け入れると分かっていた。お前に馬鹿にされたとも思っていない。だから…泣くな、クレイア」
「…泣いてなんかねーですよ、ばーか」
赤ん坊のおくるみに顔を埋めているクレイアを後ろから抱きしめる。
すん、と小さく鼻をすする音が聞こえた。
「意地っ張りめ」
「カタクリさんに言われたきゃねーです」
上げさせた顔の目じりににじんだ涙を拭う。
横に座っていたクレイアを膝に抱き上げ、ともに赤ん坊を抱く。
「…こいつはどんな大人になるのだろうな」
「カタクリさんみたいに強くて、妹たちみたいに可愛くて、ペロス義兄さんみたいに気配り上手で、ママみたいに純粋な子になって欲しいです」
「…自分も入れないか」
「私みたいに空気が読めなくてバカでトンチキな女になんて似なくていいです」
「…お前は悪くないから自分をあまり責めるな。お前がおれの思っていたより繊細な女だっただけのことだ」
「人の傷跡に触らないのは普通です」
つーん、とそっぽを向いてしまうクレイア。
傷に触れてしまったと落ち込む、その優しさが愛おしくて、背けた顔の方に回り込み、そっと唇を重ねた。
何も言わず、受け入れたクレイアは唇を離したカタクリを少しだけ睨みつける。
「…だから私にキス、してくれなかったんですねぇ」
「…お前が寝てる間にしたことはある」
「私はねーです」
結構気にしてたんですよ、と言うクレイア。
「お前、案外可愛いことを言うんだな」
「…あなただけでさぁ、旦那様」
そういってもたれかかるクレイアを支えるカタクリ。
2人はしばらく、眠る赤ん坊を愛おしげに眺めていたのでした。
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