87 男の天女 ページ38
「これで……答えてはもらえないか」
男の人で、18歳で。
特徴的な傷痕が左腕にあって、スマホを持っていて。
あかねさんの友だち、ひいては天女に間違いないのではないか。
……天人だった。うん、慣れない。
でも、何故か答えられなかった。
スマホなんて決定打と変わらないとも思うのに。
私、こんなに疑い深かったっけ。立て続けに、色々なことが起きているせい、なのかな。
「水……」
伏木蔵の呟きに、清水さんが首を傾げる。
「……水とか、操ることってできますかぁ？」
今度はしっかり質問した。
ド直球な問いかけだ。
そもそも具体的に水と言っている時点で、あかねさんとそれなりに親しいことはバレているだろう。
けど、聞かなきゃ進めない。
清水さんにとっての“にんたまの友”と同じ。
確信を得るものがほしい。
タソガレドキの人たちもいる中で、教えてくれるだろうか。
「………」
清水さんはしゃがんだまま体の向きを変えて、スマホを掴んだ右手を谷の方へゆるりと伸ばした。
今は向き合うような配置で話しているから、私たちから見ると前方になる。
谷底でザンッと水が跳ねる音がした。
直後、飛沫を散らせながら水が高く立ち上る。
かと思えば、弧を描いて私たちの方へと……え、降ってきーー
「っ！」
びっくりして思わず目を瞑る。
「……すまない」
申し訳なさそうな声に目を開ければ、庇うように出された雑渡さんの腕。
驚きつつそれにお礼を伝えて。
その背越しに清水さんの方を見やれば、立ち上がる姿が見えた。
身構えるタソガレドキの人たちと、私たちと、清水さんの丁度中央。
私の背より少し高い位置。
大人の腕くらい太い、紐状の水が数本、ぐるぐると巻き付いて
「さっきの木箱……！」
川から引き上げられた水が囲っているのは、先程投げ捨てられたあの木箱だった。
回収できるって、こういうことだったんだ。
球形を崩さないまま、思い思いに動く水に私と伏木蔵は目を奪われる。
本当に、あかねさんの友達だった。
「………知ってます。あかねさんのこと」
私の言葉に伏木蔵はうんうんと頷いた。
「……あいつ、元気にしてるか？」
清水さんがそっと尋ねる。
「はい！ ……えっと、ちょっと前まで怪我酷かったんですけど、もう大丈夫みたいです」
「……そうか」
清水さんの表情が緩んだ。
嬉しさが滲み出るような穏やかな笑顔だった。
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kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者の67話どのようなお話なのか凄く楽しみです。水の術者主人公君の武器は見つかったのか気になります。 (7月1日 10時) (
レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者主人公君と火の術者ヒロインちゃんの合流楽しみです。次は2人のうちどちらが登場するのか楽しみです。 (7月1日 9時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 待ってました。水の術者主人公君とタソガレドキの押都長烈さんの心理戦楽しみです。続き楽しみです。 (7月1日 1時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 続き楽しみです。 (6月30日 16時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 凄く面白いですし展開が楽しみでドキドキしてます。作者さん体調には気をつけてください。 (2023年2月5日 23時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノート角 | 作成日時：2019年11月19日 15時
