81 ページ32
「用を済ませるついでに案内しようとしていたんですが……、浅はかでした」
申し訳ない、と続く清水さんの言葉に、私と伏木蔵は全力で首を横に振った。
不運だと聞いて、私たちの程度を初めから想定できる人なんてそういない。
そんな状況下でも、ここまで守ってくれたのだ。
遠回りだったとしても、文句はない。
それどころか、感謝しかなかった。
「用って？」
雑渡さんの表情に大きな変化は見えない。
ただ冷静に問いかけた。
清水さんがゆっくり立ち上がる。
「……
「そうだね。うちの城だ」
「あの城、もうほぼ完成ですか」
「うん、人の移動も始まってるくらいだし」
淡々とした会話。
その最後に、清水さんは口を引き結んだ。
眉を寄せて何か考え込んでいる。
「……どうかしたんですか」
おずおずと私は尋ねてみた。
「いや……そうだな。このまま依頼を果たすべきか、迷っている」
清水さんは手に持った木箱を、トントンと指で打った。
「その依頼って、うちの城に関係あること？」
再び雑渡さんが質問した。
「……つい一刻ほど前に受けたものです。この木箱をオーマガトキ領のとある方に渡してほしいと」
え、話しちゃうの？
私と伏木蔵と、驚いて目を見開く。
「それを果たすにあたって、必ず通る道があの城付近にあるもので。……依頼主は“タソガレドキが新しく城を造る可能性がある”と言っていたんですが」
「もう出来てるね」
「はい。ですから、どうしたものかと」
会話が一段落した……らしいので、私たちは焦りつつ清水さんに話しかける。
「あ、あの……いいんですか？ そんなに依頼の内容喋っちゃって……」
「……迷っているとは言ったが、現時点で秘密を守ってまで、依頼を果たす義理が無くなった」
「それって……依頼した人たちが、嘘をついてたってことですか？」
嘘禁止、という立て看板の文面を思い出す。
そういえばあの看板、三叉路に立てっぱなしで来たような。
「俺は嘘の可能性が高いと思っているが……そうだとすると、これをどう処分するかも難しくなる」
全くついていけない。
私たちの両目の間隔は今、大きく広がっているのではないだろうか。
「山本、説明」
「はっ」
見かねた雑渡さんが、山本陣内さんに説明を促した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者の67話どのようなお話なのか凄く楽しみです。水の術者主人公君の武器は見つかったのか気になります。 (7月1日 10時) (
レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者主人公君と火の術者ヒロインちゃんの合流楽しみです。次は2人のうちどちらが登場するのか楽しみです。 (7月1日 9時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 待ってました。水の術者主人公君とタソガレドキの押都長烈さんの心理戦楽しみです。続き楽しみです。 (7月1日 1時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 続き楽しみです。 (6月30日 16時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 凄く面白いですし展開が楽しみでドキドキしてます。作者さん体調には気をつけてください。 (2023年2月5日 23時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ノート角 | 作成日時：2019年11月19日 15時
