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「ちょっと葵ちゃん!?」
「いいじゃない。明日暇だし」

「やったー!」


「………」



喜ぶ陽菜。
その様子を見ると、水を差すのが非常に心苦しい。
しかしこのままではダブルブッキングになる。

俺はしゃがみこんで陽菜と視線を合わせた。



「……陽菜、明日は師走と会う日なんだが」

「ぇ………あ」



陽菜は固まってしまった。
先週伝えた約束の日、“来週の土曜日”は明日だ。


約束したのは俺と師走で、陽菜は師走にも懐いているとはいえ、悪く言えば巻き込まれた形である。


本音を言うならば葵さんと遊ばせてやりたい。

しかし、まだ幼い陽菜を1人で行かせるわけにはいかない。

葵さんを疑っているわけではないが、今日あった相手に幼子を任せるのは保護者として無責任すぎる。



「師走?」

「俺の友人です」

「忙しそうなお名前ね」



葵さんはそんな感想を述べつつ、さらっと言葉を続ける。



「じゃあ、明後日は? どう?」



俺に問いかけたらしい。葵さんと目が合った。フットワークの軽い人だ。

スケジュールに余裕があることを頭の中で確認して、俺は頷いた。



「……明後日なら、大丈夫ですよ」

「……いいの?」



陽菜は俺と葵さんの顔を交互に見た。



「ああ、いいよ」

「もちろん!」



答えを聞いた陽菜の顔はみるみるうちに明るくなる。



「よかったね、陽菜ちゃん!」

「うん!」



根古先生の言葉に陽菜はその場で小躍りした。弾けんばかりの笑顔が眩しかった。













帰宅した陽菜はご機嫌でプリンを頬張っていた。
上手く皿に“ぷっちん”できたことも嬉しかったのだろうが、喜びの最たる理由は日曜日だろう。
当日の待ち合わせ場所を何度か口ずさんでいる。


俺はというと、陽菜の様子を眺めながら父さんのノートを開いていた。

新たな妖怪に出会った後の、定番行事である。



(固有名詞が載っているとは思わなかったが)



山形県の妖怪四十七士。
雪女 葵。


雪女が1人でないことはぼんやりと理解していたが、何だか不思議な感じだ。

まあ“鬼太郎”なんて、がっつり固有名詞だしな。



「陽菜。明日もお出掛けするから、今日は早めに寝ような」

「はーい!」



陽菜はスプーンを持った手を高く挙げた。



「しあすくん、げんき?」

「ああ」



そういえば、鬼太郎の話をするんだったか。
つくづく妖怪に縁があるものだ。



(この血筋なら、仕方ないのか)



むしろ今までが平和すぎたのかもしれない。

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tukina0123(プロフ) - とても面白かったです!!ゆっくりでいいので更新頑張って下さい!! (2023年2月4日 21時) (レス) id: 32e7754e7a (このIDを非表示/違反報告)
ブラザー坂本 - ぷぎゅぷぎゅ鳴る靴にはしゃぐはるなちゃんがめっちゃ可愛いです!!この兄妹推せます!素敵な作品をありがとうございます! (2019年12月31日 7時) (レス) id: 40871cc89e (このIDを非表示/違反報告)
ノート角(プロフ) - みっこさん» そのようにおっしゃっていただけて嬉しいです。とても励みになります…! お読みいただきまして、ありがとうございます! (2019年11月25日 8時) (レス) id: 0ad2eeb457 (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - お話の最初から朱の盆や蒼兄さんが出てくるとは素晴らしいw妹ちゃんの喋り方も可愛いし夢主くんがかっこいい!これからも更新頑張って下さい! (2019年11月24日 21時) (レス) id: 57676473eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ノート角 | 作成日時:2019年11月18日 0時

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