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「……大丈夫、とは言えないんですけど」
「はい」
妖怪とはいえ保育園での立場はバイトさんだ。
そこまでの答えを求めるのは無理がある。
「陽菜ちゃんはすごく、幸せそうですよ」
ニコッと根古先生は笑った。
「私、これでも色んな人を見てきてますから。間違いないです!」
その言葉に安堵したのは、彼女が悠久を生きる妖怪だからだろうか。
それともその、曇りのない笑顔のおかげだろうか。
「にーちゃー!」
目を移した先で、陽菜は真っ直ぐに伸ばした腕を大きく降っていた。服が砂まみれになっている。
隣で屈む葵さんも砂山に手をかざして、こちらに向けて強調している。
ジャジャーンという声が聞こえてきそうだ。
陽菜と葵さんの間には、陽菜の身長と同じくらいに高い山が1つ、2つ、3つ……いつの間にあれほど作ったのか。
驚きつつも俺は手を振り返す。
「行きましょうか」
「そうですね!」
根古先生を促して、砂場に向かった。
「すごい?」
「ああ、すごい。頑張ったんだな」
「あおいちゃーがね、おやまつくるのじょーず! たかいたかいなの」
はて、今砂山が微かに煌めいたような。まるで氷に光が反射しているかの如く。
まさか内側を固めたのだろうか。
当の葵さんは何やら根古先生に叱られているらしい。
からかわないで!と顔を赤くする根古先生に、冗談よと葵さんは返した。
「陽菜、そろそろ帰るか。プリン買うんだろ?」
「ぷぃん!………あ」
プリンという言葉に反応したものの、すぐに表情は暗くなる。
「ニャンニャンせんせぇ」
「あ、なに? 陽菜ちゃん」
ぱっと根古先生は表情を切り替えた。
素早い。さっきまで猫のような顔だったのに。
「いつあえぅ、る?」
いつ会える、という言葉が突っかかってしまったらしい。
「来週の初め、月曜日にまた保育園で会えるよ!」
「……あおいちゃーは?」
「んー……そうね」
考える素振りの後、葵さんは陽菜の前にしゃがみこんだ。
「いつ会いたい?」
「………あした」
さすがに無理がある。
陽菜をどう宥めようかと思案するのもつかの間。
「いいわよ」
あっけらかんと言う葵さん。
そして、予想に反した肯定の答え。
陽菜の表情がパアッと晴れる。
対して俺と根古先生は、
「……え」
「えぇ!?」
ポツリと漏らした声は、根古先生の驚きと重なった。
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tukina0123(プロフ) - とても面白かったです!!ゆっくりでいいので更新頑張って下さい!! (2023年2月4日 21時) (レス) id: 32e7754e7a (このIDを非表示/違反報告)
ブラザー坂本 - ぷぎゅぷぎゅ鳴る靴にはしゃぐはるなちゃんがめっちゃ可愛いです!!この兄妹推せます!素敵な作品をありがとうございます! (2019年12月31日 7時) (レス) id: 40871cc89e (このIDを非表示/違反報告)
ノート角(プロフ) - みっこさん» そのようにおっしゃっていただけて嬉しいです。とても励みになります…! お読みいただきまして、ありがとうございます! (2019年11月25日 8時) (レス) id: 0ad2eeb457 (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - お話の最初から朱の盆や蒼兄さんが出てくるとは素晴らしいw妹ちゃんの喋り方も可愛いし夢主くんがかっこいい!これからも更新頑張って下さい! (2019年11月24日 21時) (レス) id: 57676473eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノート角 | 作成日時:2019年11月18日 0時