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3 三十数年前の話 ページ4

俺の先祖は陰陽師だったらしい。
一応俺にもその力は(かなり偏ってはいるが)遺伝していた。

そのおかげで、妖怪の気配を区別するくらいはできる。
声を張り上げなくて済むくらいの距離で会話して、やっと分かるくらい感度は低いものの。



(嫌な感じは無かった)



陽菜を預けて問題ないだろう。
判断材料がそれだけか、と思われるかもしれないが、俺の場合これで十分なのだ。
むしろ、こっちの方が妖気察知より鋭敏だ。


何より、わざわざ人間の世界に働きに出て、人に危害を加えることは無いと思いたい。


俺が“お守り”だの“結界”だのを、陽菜に授ける術でも使えれば良かったんだが。
無いものをねだっても仕方あるまい。



駅に着いた俺は改札に定期を通し、ホームに向かう。



(…今日は寒い)



電車を待つ間、吹き付ける風は中々に強い。
左手をポケットに突っ込む。
右手は絶賛ネットサーフ中なので、耐えるしかないな。

陽菜にもっと厚着させとくべきだったか。
いや、まだ秋だしな。あんまり早く着込むと、冬が越せなくなるか?



(……ああ、)



スクロールしていた指を止める。

スマホに映し出された山を幾つも跨ぐくらい大きな、頭が複数ある蛇。
もう見慣れたその画像。
信憑性の高い、ほぼ事実とされているけれど、都市伝説と同様に扱われているそれ。


三十数年前のある日、日本中で一斉に数多の妖怪が現れ、人間は逃げ惑うしかなかった。
恐怖に震える人々に追い討ちをかけるように、強大な蛇ーーヤトノカミが姿を見せた。


どうやって終息したのか、世間は知らない。

今ほどSNSが発展していなかったから、画像もそこまで残っていない。



母さんはその動乱の根本的な原因を、人との繋がりが切れたからだと言っていた。

ヤトノカミの邪悪な魂を封じた人間の末裔である、風祭さんという方が、周囲から孤立して封印が弱まったからだと。



何でそこまで知っているのか。
そう尋ねた俺に母さんは、



『昔の名残よ』



いたずらっ子みたいに笑って言った。



目的の電車が来た。
人の流れに合わせて乗車する。通勤ラッシュの時間帯、当然座れる筈もない。


俺はドアの近くで手すりに掴まり、もう片方の手でスマホを弄る。
ふと、何気なく窓の外を見た。

青空と、流れる景色に目を眇める。



ヤトノカミを静めた存在についてーー俺は、母さんからの又聞きではあるが、知っていた。



『ゲゲゲの鬼太郎っていうね、人間を助けてくれる妖怪がいるのよ』

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tukina0123(プロフ) - とても面白かったです!!ゆっくりでいいので更新頑張って下さい!! (2023年2月4日 21時) (レス) id: 32e7754e7a (このIDを非表示/違反報告)
ブラザー坂本 - ぷぎゅぷぎゅ鳴る靴にはしゃぐはるなちゃんがめっちゃ可愛いです!!この兄妹推せます!素敵な作品をありがとうございます! (2019年12月31日 7時) (レス) id: 40871cc89e (このIDを非表示/違反報告)
ノート角(プロフ) - みっこさん» そのようにおっしゃっていただけて嬉しいです。とても励みになります…! お読みいただきまして、ありがとうございます! (2019年11月25日 8時) (レス) id: 0ad2eeb457 (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - お話の最初から朱の盆や蒼兄さんが出てくるとは素晴らしいw妹ちゃんの喋り方も可愛いし夢主くんがかっこいい!これからも更新頑張って下さい! (2019年11月24日 21時) (レス) id: 57676473eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ノート角 | 作成日時:2019年11月18日 0時

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