26 冷たいお姉さん ページ28
※
今日も保育園に根古先生はいなかった。
昨日と2日続けて。
お手伝いと言っていたし、勤務日は不規則なのだろう。
午後3時過ぎ。迎えに行くと、陽菜は明らかに気落ちしていた。
(よほど懐いてるんだな)
俺と手を繋いで歩く陽菜に視線を移す。
保育園の他の先生にそれとなく聞いてみたところ、来週の月曜日からはまたいらっしゃるそうだ。
「陽菜」
「ん〜〜」
拗ねたような返事に、俺は思わず苦笑した。
「今日の夜、デザート何がいいんだ?」
一瞬驚きを挟んでから、パアッと陽菜の顔が明るくなる。ひょこひょことツインテールが翻った。
「なんでもいーの?」
「1つだけならな」
「じゃあね、ぷぃんがいい!」
「プリンか」
「ぷっちんできるやつ!」
「ああ」
このままスーパーに向かうことにしよう。
小さな手に動きを任せれば、繋いだ手はご機嫌に揺れた。
根古先生に会えない寂しさが消え去ったわけではないだろうが、陽菜の満面の笑みに一先ず安堵する。
「ニャンニャンせんせえ」
「ん? ……ああ」
目的地に近づいた時だ。
スーパー手前の本屋の前。
大きな桃色のリボンが視界に移る。
「ニャンニャンせんせぇ!」
今度は大きな声で陽菜が名前を呼んだ。
根古先生がこちらを見て、少しの間の後、手を振った。
手を繋いだまま駆け出す陽菜に合わせて、大股で歩み寄る。
「こんにちは陽菜ちゃん」
「こんにちは!」
嬉しさが弾んだ声に現れていた。
「お兄さんもこんにちは」
「こんにちは」
朗らかな挨拶に思わず微笑した。
ずっと年上の筈なのだが、やはりどうにも年下のように思えてしまう。
「せんせぇなにしてるの?」
「お買い物よ。陽菜ちゃんは今おうちに帰るところ?」
「うん!」
陽菜に目線を合わせるように根古先生はしゃがんだ。
「にーちゃがぷぃん、かってくれるって」
「陽菜ちゃんプリン好きって言ってたもんね。よかったね!」
「えへへ」
陽菜はその場で跳ねそうな勢いだ。
というより、既にじっとしていられないのか。
体を前後に揺らしている。
と、その時だった。
本屋から出てきた女性が、根古先生に声をかけた。
「お待たせネコむす「にゃあぁぁぁ!!」むぐっ」
俺も陽菜も思わず目を丸くした。
根古先生が、それこそ猫のように素早くしなやかに女性の口を塞いだのだ。
薄青の髪をポニーテールにしたその女性は、瞬きを繰り返しつつも固まっていた。
53人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
tukina0123(プロフ) - とても面白かったです!!ゆっくりでいいので更新頑張って下さい!! (2023年2月4日 21時) (レス) id: 32e7754e7a (このIDを非表示/違反報告)
ブラザー坂本 - ぷぎゅぷぎゅ鳴る靴にはしゃぐはるなちゃんがめっちゃ可愛いです!!この兄妹推せます!素敵な作品をありがとうございます! (2019年12月31日 7時) (レス) id: 40871cc89e (このIDを非表示/違反報告)
ノート角(プロフ) - みっこさん» そのようにおっしゃっていただけて嬉しいです。とても励みになります…! お読みいただきまして、ありがとうございます! (2019年11月25日 8時) (レス) id: 0ad2eeb457 (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - お話の最初から朱の盆や蒼兄さんが出てくるとは素晴らしいw妹ちゃんの喋り方も可愛いし夢主くんがかっこいい!これからも更新頑張って下さい! (2019年11月24日 21時) (レス) id: 57676473eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ノート角 | 作成日時:2019年11月18日 0時