かの者、シハライ ページ26
酔っ払いが数人出たところで宴は終了となり、片付けをシラフの者たちで済ませ各部屋へと散った。
和泉もまたおでんをお預けされやけ酒を飲み潰れたモコナを抱え部屋に戻った。
風呂は先に済ませてあるのでモコナを座布団へ寝かせ、自分の布団を敷いていた時だった。
？「…主、ちょっといい？」
きしりと廊下を踏む音と共にこちらへ声がかけられる。
「加州ね、入って。」
加州「あ、ごめん。寝るとこだった？」
「敷いていただけだから。どうしたの？」
加州「…対価、払いに来た。」
部屋に入り襖を後ろ手に閉めた加州はその場に正座するなりそう言った。
大和守と堀川、そして和泉守を助けた対価を支払いに来たと。
和泉は加州をじっと見つめて、ふっと柔らかく笑う。
「いらないわ。」
加州「…え！？だって、対価でしょ？払わなくていいわけないよね？」
「そもそも、私がここに来たのは"本丸を立て直す"ため。刀剣達の手入れも闇落ちのことも含まれるから、対価の支払いは政府にいくわね。」
加州「じゃあなんで…」
「貴方が本当に助けたいと願っているか知りたかったの。騙すような言い方をしてごめんなさい。」
加州の前に座る和泉は優しく頭を撫でる。そうすることで彼の肩から力が抜け安心したように息を吐いた。
くしゃりと笑いながら和泉に抱き付く。
加州「…少しこうさせて。許すから。」
「ふふ、いくらでもどうぞ。頭は撫でる？」
加州「…ん。」
少しだけ見える加州の顔は恥ずかしそうにほんのりと赤く染まっていたが、和泉は見ていないフリをして気の済むまで頭を撫でていた。
加州「ん。許した。」
「ありがとう。」
加州「…俺が抱き付いたの、他のやつには内緒にしといてよね。」
「もちろん、言わないわ。可愛かった貴方のことは私の中だけの秘密よ。」
加州「…おやすみっ」
まだ顔が赤い加州はそのまま部屋を出ていった。
モコナが眠っているのを確認しタオルケットをかけてやると自分も布団に入り眠りについた。
その後部屋に戻った加州が布団に入るも耐えきれずに花びらを沢山出してしまい、朝起きた同室の大和守に何故こんなに花びらが落ちているのかしつこく問いかけられる姿が数振に目撃されるのだった。
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作者名：時雨 | 作成日時：2019年8月30日 11時
