その者、ゲンセ ページ15
食事が終わり、片付けは燭台切光忠と歌仙兼定がやると申し出てくれたので和泉は甘えることにした。
堀川、和泉守、大和守、加州もそれを手伝うと言うので別れ、部屋へ入ろうとしていたところモコナが広間から走って逃げてくる。
〈和泉、置いていくなよー。〉
「あら、五虎退の虎と遊んでたみたいだったから。もうあまり悪い気もないし、モコナなら大丈夫でしょう？」
くすくす笑う和泉の肩に飛び乗ったモコナは不満げだった。そんなモコナをさらりと撫で部屋に入る。
襖を開けるとそこには布団などがあるはずだが、目の前には何処かの庭だった。
「侑子のように禍々しい歪みだとイロイロ迷い混みそうだし、直通の方が楽ね。」
そこに入ると懐かしの我が家であるミセだ。高いビルに挟まれているが広い庭と縁側付きの母屋、色々なものを仕舞ってある蔵、敷地をぐるりと囲う柵。
〈〈主サマだー！〉〉
「マル、モロ、ただいま。」
マル、モロ〈〈お帰りなさ〜い♪〉〉
可愛らしい服を着た水色と薄桃色の髪の少女が和泉に抱き付く。優しく抱き止めそれぞれの頭を撫でてやり、ゆっくりと母屋へ歩く。
着物を着た男が奥から出て来たかと思えば縁側に座った和泉の隣に腰掛けた。
??「帰ったか。」
「ただいま、四月一日。」
四月「おう。…で？どうだった、ブラック本丸とやらは。」
「付喪神と言えど神。その神を霊力と言霊で操り、手入れも食事もさせず連続の出陣遠征、折れた刀は数振、今いる刀剣は2振目が多い。うちの本丸以外だと、強制的な夜伽もあるらしいわ。」
四月「成る程ねぇ……欲がある人間に霊力と権力与えると録なことになんねぇな。…それで？どうする。」
「前任は生きている。摘発されてないのに審神者と連絡が取れず、役人が来て発覚したらしいから。酷い闇落ちがいない、つまり殺しはしていない。なのに審神者が消えたのは何故かしら……」
四月「………逃げた、ってのは？」
「今まで支配していて？殺されそうになったなら、殺そうとした刀剣は闇落ちしてるはずよ。和泉守以外闇落ちはいなかったわ。」
頭を悩ませていると四月一日は赤い煙管に火をつけ、それをくわえた。
二人の間に細く長い煙が漂う。沈黙を破ったのは四月一日だった。
四月「………和泉、支配する力は何時までも無限にある訳じゃない。霊力、それもそんなゲスなことやらかすやつのなら尚更な。」
「…！まさか、審神者が闇落ちしかけた…？」
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作者名：時雨 | 作成日時：2019年8月30日 11時
