【HQ】秘密の図書室【宮兄弟】 (ページ8)

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次の日、席についていつも通り本を読む。
周りと自分を遮断するように髪の毛を垂らす。

下を向いて自分の世界に入りかけた時、視界の隅に誰かが入ってきた。

顔を上げると治さんが立っていた。

治「おはよう」

「…お、おはようございます…」

治「荻(おぎ)野さん、やったっけ？」

「…萩(はぎ)野、です」

治「すまん…俺物覚え悪いねん」

「いえ、慣れてます。…それで、何か……？」

治「いや、昨日会ったやん？俺ら」

「…そうですね。昨日はありがとうございました」

治「あー、ええねん。そういう事ちゃうんよ」

「？」

てっきり昨日の借りを返せと言われるのかと思った。

治「図書委員さん、なん？」

「はい…そうですけど」

治「放課後行ってもええ？」

「…本読まれるんですか？」

治「読むわ！て、今日は本読むためちゃうんやけど」

「今日は私当番じゃないです」

治「え、そうなん？」

「…はい。あの、そろそろ時間なので…」

治「へ？まだええやん」

そういう事ではない。
普段地味で基本的に誰とも話さない私が、急に人気者の治さんと話なんかしているから周りの目が痛い。

治「…ふうん。まあええわ。いつ当番なん？」

「火曜と木曜です…でも、」

治「わかった。ほな」

「え、あ、ちょっ…」

“でも、来ない方がいいです。”そう言いかけたが聞く耳持たず行ってしまった。

ていうか、部活はないのだろうか。
強豪校というならば部活に力を入れているんだろうし、宮兄弟として有名であればきっとレギュラーだろうし…。

まあ、いいか。

昨日初めて会ったというのに何を感じたのかわからないけど、多分来ないと思う。
根拠はないけど。

私は途中で遮られていた本に目を戻した。

.

昼休み

私はいつもお弁当を教室では食べない。
なんとなく居心地が悪いし、人がたくさんいて落ち着かないから。

人気の少ない裏庭でパンを貪る。

当番の時とこの時間が私の憩いの時間だったのに、今では当番の日は憂鬱になりつつあるからもうこの時間しかゆっくりできる時間がない。

「はー、んまい」

雲一つない空を仰ぎ、深呼吸すれば初夏の気持ち良い空気を感じる。

平和だ。

ずっとこうならいいのに。

なんて。

そんな願いは無駄なのに。