音がひとつ ページ3
とある日の朝、
わたしはいつものように喫茶店ポアロの裏のレッスン室に来ていた
『ふう...まずは慣らさなくちゃ...』
キーボードの前に座り軽く音を出す
それから短く息を吸い込み靴でリズムを刻みながら音楽を奏で始めた
彼らとわたしが大好きな音楽を奏でるときだけ、
わたしはわたしだけの世界に浸っていられるのだ
それと同時にこの世界にわたしの全てを、あの輝きを知る人がいないと思い知らされる
なぜならば、ここにわたしの愛した彼らは居ないのだから
そうして暫く慣らしているとタイミングよくレッスン室の扉が開いた
「Aさん、朝食の用意はしておきましたよ」
そろそろ此方へ来たらどうです?と訊ねてくるのはポアロの店員、安室さんだ
『ん...わかりました、今行きます』
毎朝わたしがレッスン室に来て、安室さんが迎えにきて、一緒にご飯を食べる
公安の仕事だったり組織の仕事だったりで彼がいない日も多いが、
それ以外はこれがもはや習慣と化していた
裏からポアロと繋がっているためそこから入り、特等席となったカウンターの端から二番目に座る
すると隣に誰かが座った
「Aさん、おはよう!」
子供特有の高い声と特徴的な眼鏡
『おはよう、コナンくん』
にこっと笑った彼の顔は次の瞬間ひそめられた
そして小声で告げられる
「ねえ、Aさん。昨日ご飯食べてないだろ」
『...えへ』
流石、平成のホームズだ
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作者名:USA | 作成日時:2021年7月26日 19時