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この気持ちが叶わない想いだと気づいたのは、案外早かった。
炭治郎は無限列車で下弦の壱、そして上弦の参と戦った。そして目の前で炎柱様が息を引き取った。
最初こそ彼は項垂れ、落ち込んで自分を責めていた。もっと俺が強ければ、もっと鍛えていれば、もっと経験を積んでいれば…。そんな言葉をぽつりぽつりと零していた。
私は聞いて聞かぬふりをした。私にはどうすることもできない。当事者しか解決できないことだと、そう思っていたから。
でも、Aは違った。
炭治郎の話を親身になって聞き、まるで自分のことのように考え、一緒に乗り越えていこうとしていた。
彼女は情に厚くとても優しいから、落ち込んでいる人を見ると放っておけない。少しでもも力になれるならとできる限りのことを懸命に成し遂げる。
そんな健気な姿は、とても美しく私の憧れだった。
そして、その姿に好意を持つ人だって少なくない。
容姿も心も美しく、誰よりも優しく人のことを考えられる子を好きになるなと言う方が無理だろう。
実際、蝶屋敷で励ましの言葉を掛けた人から愛の言葉を伝えられる場面を何回か見たことがある。
でもAは誰かの気持ちに応えることはなかった。好いていない人とお付き合いすることは、告白を断ることより不誠実だからと。
その言葉には重みがあって、心底納得させられた。
だって、好きでもないのに善意でお付き合いしたところで得られるものは何もないもの。
そんな誠実ささえ持ち合わせる彼女にだからこそ。彼は惹かれ恋焦がれたのだと思う。
私は目が良いからわかった。彼がいつも、誰かを探していることを。
ほんの少しの目の動きだけど、私は気づいてしまった。
最初は誰を探しているのか全く検討もつかなかった。今日も屋敷中を眺めているな。何か失くしてしまったのかな。
そのくらいにしか考えていなかった。
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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時