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「…炭治郎。」



私の言葉に炭治郎は恐る恐る顔を上げた。
炭治郎は今にも泣き出してしまいそうな表情をしていた。

彼は彼なりに考えてくれていたのだ。
やっぱり、好きよ。
貴方が彼女を想っていても。この気持ちは揺らがないの。



「…ありがとう。私、吃驚した。まだ全部受け止めきれてない。

…でも、Aは。私にとってかけがえのない存在だったの。今でもずっと。大好きなの。
友人だったとしても姉妹だったとしても私のこの気持ちは消えない。

だからね、本当に、ありがとう…」



そう告げるととうとう炭治郎は涙を零し始めてしまった。慌てて手拭いを差し出すとカナヲが使って、と言われてしまった。

どういうことか最初はわからなかった。
けれど、炭治郎が私の目元を指差して、初めて気がついた。


___私、泣いてるんだ。


これは悲しみの涙じゃない。でも、喜びの涙とはまた違う。
なんだろう。なんだろう。

…感動の、涙?


ううん、やっぱりわからない。でも。でも。



「……っA…」



もう一度だけ、会いたいよ。一緒に蝶々を眺めようよ。アオイと一緒にお料理している姿が見たいよ。なほ達と無邪気に駆け回る姿が見たいよ。しのぶ姉さんと微笑みながら話をする姿が見たいよ。

A、A、A…。



「……それで、カナヲの話したいことって…」



涙を羽織の裾で拭いながら炭治郎は聞いた。

ああ、そうだ。きちんと、伝えなくちゃ。



何故だろう。あんなに言うことが怖かったのに。振られてしまうことが悲しかったのに。

今は心が軽い。素直に自分の気持ちを晒せば良いだけだって気づいたからかな。
もしかしたら、Aが応援してくれて、いるのかな。

なんて。都合の良いことを考えてしまう。



「炭治郎。」



炭治郎の赫灼の瞳を見る。


ありがとう、ありがとう。

私に心をくれて。Aと炭治郎がいたから、私の心は花開いたの。

私に恋を教えてくれて。こんなに甘く切ない気持ち、初めて知ったの。

私とAが姉妹だって、気づかせてくれて。
私、嬉しかった。Aと特別な繋がりがあることに、心から幸せだと感じたの。


炭治郎、好きよ。貴方が好きよ。
Aのことを深く深く愛しているところも引っ括めて、私は貴方が好きなのよ。

それに気がつけて、良かった。
私はAを愛する貴方も好きなのよ。








「好き。」

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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時

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