真実を知るべからず

8話 ページ8

『……こない広いとこ、1人で使ってええんやろか』

明石の目の前に建つ建物、それが明石がこれから寝泊まりする場所である
外観は蔵のようであるが、中へ入るとたちまち和室が広がっている
また、2階に上がると1階の和室とは打って変わって洋室が2部屋あった

(私(・)の事情を考慮してくれたっぽいな…)

離の中を軽く探索した後、洋室にあるクローゼットの中から内番服を取り出し、着替え始める
しかし、この明石の内番服は他の明石とは少し違う
ジャージの下に着るTシャツは襟元が鎖骨が少し見えるほどしか開いていない
また、上着も前は開けず、蛍丸のように首までチャックを締め、袖も捲り上げていない。寧ろ、萌袖の様になっている

『やっぱこの格好が落ち着くなぁ…』

と、言いながら再び階段を降り、厨…キッチンの方へと向かい、冷蔵庫を開ける

『玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、牛肉、糸こんにゃく…。メインは肉じゃがで…あとはご飯と味噌汁でええか』

1人になると手抜きになるなー、と思いつつ、食材を切っていく明石
皆と一緒に食べないのかと疑問に思うが、あの様な事(7話参照)を言ってしまったのだ
今更、仲良くなるなど出来るとは思えない

『…また、振り出しか』

そう呟き、それからは離から一歩も出ることはなかった

9話→←7話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す