真実を知るべからず

24話 ページ24

『よっと…この姿、久しぶりやな』

明石はとある空間に着地した。今の服装は、戦闘服や内番服でも無く、黒スーツに黒の革靴。持ち物は数枚の札のみ。本体である明石国行は無い

『「芹沼晶の名のもとに、栄田真帆の場所を導け」。「窮追」』

札を取り出し詠唱すると、札が光り始め、1本の道を作りだした

『あっちか』

明石はその道を走って行く
今、明石がいるこの空間は、あの世とこの世の境目のような所。人ならざるものが住処にしていたり、移動するために入り込んだりする空間だ

《あー、もうー…この鎖といい、この紐といい…うざったいわねえ》
『!』

しばらく走っていくと、村正を連れ去ったと思われる落神と、千子村正もとい、栄田真帆の魂が居た
落神は真帆の魂に絡みついた絆の糸と、魂と身体を繋ぐ鎖を外すのに試行錯誤していた

『その子から離れえ!!この落神が!!』
《!?》
『「禁」!!』
《ギャァァァァァァ!!》
『ふう…』

明石はすぐさま消滅の札を使い、落神を消滅させた。落神自体、差ほど力が無かったようで、意図も簡単に真帆の魂を回収することが出来た

『さて、さっさと身体に戻しに行きましょかね』

と、明石が真帆の魂を抱えようとしたその時

【グワアアア!!】
『!?』

ザシュッ

『くっ…!!』

何者かが襲いかかってきた
何とか真帆の魂を抱きかかえて避けたものの、完全には避けきれず左腕に怪我をした

【アノ落神メ…アッサリ殺ラレヤガッテ…】
『何者や、アンタ…』
【俺ハ、鬼ダ。ソノ魂ヲ喰ウタメニ、ワザワザ落神ニ連レ出サセタトイウノニ、トンダ邪魔者ダナ】
『悪いけど、お前にこの子は渡さん。絶対に!』

明石はまた別の札を取り出し、再び詠唱し始めた

『「芹沼晶の名のもとに、栄田真帆を元の場所へ戻せ」。「送還」』

札は真帆の魂に張り付くと、地面に陣が現れ、あっという間に真帆の魂ごと消えてしまった

【馬鹿ダナ、オ前。アノ娘ゴト帰レバ良カッタモノヲ】
『ご心配ありがとさん。元々、あれは1人しか無理やから大丈夫や。それに…あの子を戻した時点で私の任務は終了しとる
ここに残った理由は、個人的にアンタをぶちのめしたいからや』
【オ前ハ本当ニ、馬鹿ナ人間ダ】
(…すんません、月宗はん。約束、守れそうにないですわ)

相手は鬼、明石国行の持ち物は残り5枚の札のみ。力の差は歴然
しかし、もしここで明石が逃げれば、この鬼はまた別の者を狙う可能性がある
明石はどうしてもそれを防ぎたかった

『明石国行…参る!!』

25話→←23話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す