二度目まして、ヒーロー!【ヒロアカ二次創作】 (ページ10)

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【10】感情論、理性固めページ10

イレイザーヘッド、もとい相澤さん。

　“前”の時はプロヒーロー勢の中ではイチオシだったキャラクター、今となっては私を助けてくれたヒーローである。

　そのスタンスには“前”からかなり憧れていて、そしてここに来て助けられたことと、また最近の交流を通して割と親しくなったことで更に惚れ直した。

　……だからまあ、離れたくないな、と思うことも少なくはないし。きっとこの不器用な、しかし意外と人を見ている目の前の彼にも、この気持ちはバレているんだろう。

「……お前、

　俺の、娘にならないか」

合理主義なその口を以て、こんな事を言わせてしまうぐらいには。

でも。

『駄目ですよ』

彼がわずかに目を見開く。きっとこれは予想し得なかったんだろうな。

だけど、仏頂面の緊張も、黒い目に混じる不安の色も。全部全部、手に取るようにわかるから、だからこそ─“駄目”だった。

「…それは、どういうことだ？」

『娘になるのが、嫌な訳じゃない。むしろ嬉しい……けど相澤さん、

私はあなたに、そんなことをさせられません』

「は？」

低い声がぴりりと肌を撫でる、独特の感覚。刺々しくも刺さらないそれはきっと、彼の優しさの表れだ。

『相澤さんは、優しすぎる。

いくら自分が身寄りのない子供を助けたからといって、ヒーローが…あなたがこんなに通いつめて手ずからメンタルケアなんてする必要ないんですよ。

ましてや引き取るとか、そんなの。ありえません』

「…………」

相澤さんは、ただ黙って話を聞いていた。

……おかしい。急に神妙な雰囲気だ。

私は彼の表情を、そっと一瞬伺ってみて──

──黒い瞳に、どこか呆れのような色を見た。

(……は)

なんだそれ。
この気持ちは、認めて貰えさえしないと言うのか。

……わからない、怖いけど。

(ぶつけるしか、道はない)

『……わかってるはずですよね？子供ひとりをあなたひとりで育てるのは、ぜったいに大変です。

……だから責任とか、正義感？とか、そういうので決めることじゃないと、思うから、』

「おい……おい、一度俺の話を聞け」

『っ何ですかまだ、』

その目が、認められないことが怖くて。
混乱、罪悪感、緊張感。やっと開けた口も何を発してるのかわからなくなってくる。
不意に相澤さんから出た声に八つ当たりをかましそうになって──その時、声を失った。

「お前は、大きな勘違いをしてるよ」

しかと見たその目は、慈愛の色に満ちていたのだった。