二度目まして、ヒーロー!【ヒロアカ二次創作】 (ページ4)

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【4】君だってヒーロー。ページ4

………最悪。

　いや、私が最悪だなんて言っちゃいけない。一番最悪なのは、こっちの世界の私なんだから。

からからの口から絞り出すように声を出した。

『……遅かったんだね』
「……遅かった、というか…手遅れになったからこそ、お前さんがこっちに来たんだ。何考えてるかはだいたいわかるが、

お前さんが思うような方法でこっちの世界のお前さんを救うことは、そもそも不可能だった」

『…………』

　思わず唇を噛んでしまう。今渦巻いているのがどういう感情なのかわからないけど、どうしようもなく苦しくて、でもこっちの私は死んじゃうぐらいにもっと苦しかったんだろうなと考えては、また輪をかけて苦しくなっていく。

(…なんだよ、そんなの。それじゃ私は、)

『この子のヒーローになんて、なれやしないんじゃん……』

　情けなくて仕方ない。たとえ私には無理だったとしても、私は助けたかったんだ。

　この子も同じ“私”だったのに、私は…

「なれるぞ」

『……はい？』
「だから、なれるぞ。こっちのお前さんにとってのヒーロー」

　何言ってるんだこいつ？

「なんか言いたげな顔だな。『何でだ、もういないのに』ってとこか？

簡単な話だよ。

こっちのお前さんは、このまま行けばここで孤独に死ぬだけだった。外に出たこともほとんど無いし、両親ももういない。つまり、あいつを覚えててやれるやつはいなかったんだ」

『……ぱんセンは？』
「略すな。……俺は今限りの存在だからなあ」

無表情なぬいぐるみが、少し寂しげな顔をしたような気がした。

「まあそれは後だ。とにかくお前さんが来なかったら、あいつを知る人も、覚えててやれる人も誰一人いなかったんだよ。よくあるだろ？『あの子は私の中で生きています』ってやつ」

　そこでふとその先が読めた。
　ああそっか、なるほど。確かにそれは簡単な話だ。簡単すぎて、救いと呼ぶにはあまりにも小さくて、気づかなかった。

「あいつを救う方法、それはあいつを覚えててやることだ。傷つけられても健気に両親を愛した、愛した故にいなくなった、俺の心の友を。お前さんの中で生かしてやるんだ……

それだけで、十分すぎるほど救われる。あいつも、俺も。

　なってくれるか、あいつと共に生きるヒーローに」

　ぬいぐるみの癖にそんな面でそんなこと言っちゃって、そんなの断るわけないじゃん。
　
『当ったり前。やってやるよ』

　案外馬鹿な君と、拳を合わせた。

───(今、私にできることを!)