青い蝶は東に降りる (ページ37)

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会話をしていく内に、霧崎さんはかなりの読書家だと分かった。
小説はミステリーや推理小説を好んで見るらしい。
さらには童話や哲学の本を読んでいる。

礼奈「童話でのオススメは何がありますか？」

霧崎「童話…。最近、読んだモノの中で個人的に好きなのは…『迷子のサーカス』ですね。」

『迷子のサーカス』…。
確かバッドエンドの童話だったな…。
彼は事細かに童話の内容を教えてくれた。

タイトルの"迷子"はそういう意味があったんだ…。

私はハッピーエンド主義だから嫌だな…。
考えさせられるような悲しい話は好きだけど、

私が子どもだったら、読みたくない本だったろう…。

礼奈「その本のどこが好きなんですか？」

彼は目を伏せた。

霧崎「砂漠に彷徨って、誰も助けてくれないシーンが印象に残りました。…どうも感情移入してしまう。」

砂漠に取り残される恐怖…。

ああ、想像するだけでゾワッとする。

礼奈「私は悲しい童話だったら『ごんぎつね』か『幸福な王子』ですね…。いい話だけど、あまりにも報われない…。」

霧崎さん「『ごんぎつね』は読んだことが無いな…。」

意外だ。小学生では国語の授業で必ず朗読するのに…

礼奈「霧崎さんは、悲しい話が好きなんですか？」
霧崎「…昔は好きではなかったな…。」

含みのある言い方だ。
コレは過去に何かあったな…。

私の経験上、バッドエンドが好きな人は一癖あるからな…。

霧崎「礼奈さんはどんな本が好きですか？」

礼奈「あー…昔から好きなのは『レ・ミゼラブル』や『スカーレット・ピンパーネル』ですかね。」

前者は映画で鑑賞して、後者はミュージカルで鑑賞したから、読んで好きになった。
小説から読んでいる訳ではなかった。

そういえば、読書の話でこんなに続いた事がなかった。
大体、皆はマンガを読むから中々、語り合えない。
勿論、私もマンガは読む。
メディアで話題になったマンガも読んだりする。

でも、クラスメイトとの共通の話題を得る為に読んでいる事が多い。

小さい頃、ヒロと図書館に行った時、ヒロが眠ってしまったことがあったな…。

そう考えると、私は霧崎さんといた方が楽なのかもしれない…。
ずっとこのまま話して─────

礼奈「────ッ!!」
霧崎「礼奈さん…？」

いや、ダメだ！
何勝手に決めつけているんだ。

まだ何も彼の事を知らないのに…！