吉澤閑也 ページ4
逃げた人々は、地下の大きな避難所に隠れていた。
化け物は突然、地上のどこかに度々出現するのだが、地下にはなぜか一体も出現しない。
これまでの襲撃によってそれが判明すると、各国政府は即座に地下避難所の設営に尽力した。ここはその避難所のうちの1つだ。
中はドーム型になっており、どこを見渡しても真っ白だ。快適に過ごせる設備も揃っている。
化け物たちから逃れるための施設なだけに、特殊な金属で造られており、化け物の怪力や鋭い爪では到底突破されない頑丈さを誇っている。
今回も、避難所に着けばもう怖いものは無いと安心しきっていた。
が、今回は違った。固く閉ざされている扉に、化け物の爪が深く突き刺さった。
ガコンッ、と無理やり外され、化け物はケタケタと笑い始めた。
『イッパイ、人！ケタケタ！食ウ？美味シイ？誰ガ、イチバン、ウマイ？？？？』
化け物は一般的に、意思疎通をあまり得意としない。よって言語という概念が存在しないので、喋れるはずがない。
つまり、この化け物は普通の化け物ではないのだ。
誰でも化け物と遭遇することはあるし、義務教育機関でも化け物に関する教育課程が制定され、誰もが化け物に関する基本的情報が頭の中に入っていた。
人々は普通の化け物ではないと気づき、一目散に駆け出す。しかし、避難所の出入口はさっき化け物に壊された扉の1箇所しかなく、とにかく化け物から離れようと蜘蛛の子の様に散る。
当の化け物はそんな人々を一人一人見つめ、品定めをしているようだ。
するとその時、避難所の照明が全て消灯する。
人々は突然のことに、各々叫び声をあげた。
あたり一面に闇が広がり、化け物も品定めをやめ、あたりを警戒していた。
「人間を食べすぎたのか？」
バチバチッ！と電気が走る音がすると、化け物は身体が固まった。自分の身体を支えることもできず、ドサッと大きな音を立てて床に倒れ込む。
怒りの雄叫びをあげようにも、口は勝手にはくはくと動くだけで、そこからは吐く息しか出てこない。
「…可哀想に。」
何者かが、うつ伏せの化け物の背中に馬乗りの状態になり、ガシッと化け物の後頭部をつかむ。
次の瞬間、先程よりも強い電気が走る音と同時に、化け物の意識は暗転した。僅かに焦げ臭い匂いがする。
パッと照明が再度点灯した。
「同情するよ、心底。」
刈安色の瞳の男は、光の無い目で呟いた。
吉澤閑也
電気を操る。自らが電気となる。
彼には生きる理由が見つからない。
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ななっちー(プロフ) - このお話がとても大好きです。設定もファンタジーで過去があるのが最高です。更新楽しみに待ってます。 (2020年3月30日 23時) (
レス) id: c8d03dec19 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - はてなブログもこの小説も読ませていただきました。とっても面白いです。続きが気になります。更新大変だと思いますが頑張ってください！ (2020年3月9日 21時) (レス) id: 85db3be13b (このIDを非表示/違反報告)
るん(プロフ) - この小説が大好きです。毎回の更新が楽しみでしょうがないです。大変だと思いますが、微力ながら応援させていただきます。 (2020年3月9日 1時) (レス) id: e59357a333 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 教えてくださいありがとうございます！ (2020年2月26日 6時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 元のはてなブログを見たいのですが、探し方を教えて下さい (2020年2月24日 7時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ああああ | 作成日時：2020年2月17日 23時
