＊ ページ29
◇
ふわふわ、ふわふわ。
寒くも暑くもないところで、ふわふわ浮いている。海のようにだだっ広いところに沈んでいるようでもあった。
まわりは真っ暗で、何も無い。
不思議と怖くなかった。むしろとても安らかな気持ち。
ずっとここにいたいなぁ。
しかし、そう思った反対に、身体が急上昇する。
あやふやだった五感がどんどんはっきりとしたものになっていく。意識が目覚めるのだろう。
やがてとてつもない光が僕の虹彩を瞼越しに焼き、身体が光に包まれる。
「おーい、おい。いい加減に起きな。」
左右の頬を叩かれている感覚で目覚める。
ぼやぼやとした視界に、叩かれる度に感じる痛み。
ああ、現実に戻ってきちゃった。
僕の頬を叩いているのはママだった。
ママも僕のことが大嫌い。
パパみたいに暴力を振るうことは少なかったけど、まるでそこにいないように無視されるのが常だった。
珍しく僕を見てくれたと思ったら、「アンタなんて要らない」と言う。いつも僕に吐き捨てるように言う文句。
僕は生まれた時から要らない子だ。
ようやくクリアになってきた視界で見えたのは、服を着込んでいるパパとママだった。
今は1月。雪が降るほど寒い。
今からどこかへ行くのかな？
うすぼんやりそう考えていると、ママは僕の腕を乱暴に引っ張って押し入れの中から引きずり出そうとする。
「はやく出なさいよ。今から外出るよ。」
「…？はい…？」
窓の外は真っ暗だ。
今から？こんな夜遅くにどこへ行くの？
パパとママは僕を車に乗せると、荒っぽい運転でどこかへ走っていく。
車なんてほとんど乗ることが無いからとても新鮮だ。窓の外の景色はとてつもない速さで右から左へ流れていく。
前部座席に座っているママとパパの会話が僅かながら僕の耳に届いてきた。
「どこに………のよ。」
「あそこ……なん……け………うじょ……。」
「ほ………にだい…………なの？」
「ゆーたら…………だ。」
断片すぎて何の話かはさっぱりわからない。
けど、笑っている2人から見るに楽しそうな会話なんだろうな。
窓の外を見ると、さっきよりも明かりの数が増えていた。街の中心あたりまで来たんだろう。人の数も増えていて、夜にもかかわらず賑やかそうだ。
やがて、パパが運転する車は急停止した。がくんと大きな揺れが身体に伝わる。
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ななっちー(プロフ) - このお話がとても大好きです。設定もファンタジーで過去があるのが最高です。更新楽しみに待ってます。 (2020年3月30日 23時) (
レス) id: c8d03dec19 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - はてなブログもこの小説も読ませていただきました。とっても面白いです。続きが気になります。更新大変だと思いますが頑張ってください！ (2020年3月9日 21時) (レス) id: 85db3be13b (このIDを非表示/違反報告)
るん(プロフ) - この小説が大好きです。毎回の更新が楽しみでしょうがないです。大変だと思いますが、微力ながら応援させていただきます。 (2020年3月9日 1時) (レス) id: e59357a333 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 教えてくださいありがとうございます！ (2020年2月26日 6時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 元のはてなブログを見たいのですが、探し方を教えて下さい (2020年2月24日 7時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ああああ | 作成日時：2020年2月17日 23時
