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1度死んだ「自分」 ページ28

「なんでアンタが生まれてきたんだろうね。アンタなんて要らないんだよ。」

多分、この言葉は僕が生まれてきた時からずっと言われ続けていたんだろう。赤ちゃんの時から、今まで、ずっと、ずっと。




右頬に固く握られた拳が飛んできて、僕の軽い身体は容易く後ろに吹き飛んだ。
ゴロゴロと転がり、後ろの襖に背中を強くぶつける。頭ががくんと大きく揺れ、くらくらと目眩を覚えた。

「邪魔なんだよ!どけコラァ!」
「う゛っ…ご、ごめん、なさい………」

僕のパパは僕のことが大嫌いで、機嫌が悪い時は僕に暴力をふるう。
背中には蹴られた痕や、タバコを押し付けられた痕でいっぱいだし、腕や足にもアザが絶えない。
それでも、滅多に顔は殴ったりしないのに。今日は特に機嫌が悪い日なんだ。
殴られたところがジンジンと痛む。もうこれから数日間は痣ができてしまうだろう。
これ、元太に見られたらまた心配かけちゃうなぁ…。
そう思いながらよろよろと立ち上がり、さっきぶつかった襖を開け中に入る。
ぴったりと閉めると、押し入れの中は真っ暗で、自分の手も見えない。
けど、この暗さは僕にとっては安心するものだ。
頭を上にある仕切りにぶつけないように、四つん這いで押し入れの奥に進む。隅っこまで行き、体操座りをして自分の足を抱えた。
これが、僕の唯一の対策。
邪魔にならないところで、じっと時が過ぎるのを待つ。ここにいれば、暴力をふるわれることもなかったし、引きずり出されるなんてこともなかった。
夏は暑いし、冬は寒いけど、それでも痛いよりはマシだ。ここは僕の部屋だった。
ぐ〜〜〜ぎゅるるる、とお腹が空腹を訴えるが、今のパパにとってはそれもうるさい雑音にちがいない。今は耐えるんだ。
やがて、瞼が重たくなってくる。
寝るのは好きだ。あっという間に時間が進む。
僕は顔を足と胴体の隙間に埋め、意識を沈めた。

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作品ジャンル:SF
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ななっちー(プロフ) - このお話がとても大好きです。設定もファンタジーで過去があるのが最高です。更新楽しみに待ってます。 (2020年3月30日 23時) (レス) id: c8d03dec19 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - はてなブログもこの小説も読ませていただきました。とっても面白いです。続きが気になります。更新大変だと思いますが頑張ってください! (2020年3月9日 21時) (レス) id: 85db3be13b (このIDを非表示/違反報告)
るん(プロフ) - この小説が大好きです。毎回の更新が楽しみでしょうがないです。大変だと思いますが、微力ながら応援させていただきます。 (2020年3月9日 1時) (レス) id: e59357a333 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 教えてくださいありがとうございます! (2020年2月26日 6時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 元のはてなブログを見たいのですが、探し方を教えて下さい (2020年2月24日 7時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ああああ | 作成日時:2020年2月17日 23時

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