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颯斗side
どうこたえようか。今はただそのことだけが脳を支配してるような感覚に落ちる。どこが好きかなんて挙げだしたらきりがない。
俺はずっと哲汰が好きで、でもそれをちゃんと口にしたのはあの一回きりだ。
多分哲汰のことだから後先考えないで俺と付き合って、今になってなんで俺なんだとかごちゃごちゃ考えた結果、そのもやもやを吐き出したかったんだろう。
そんなことを考えながら何が最適解なのかを探そうとして、逆にそれが遠回りになっていく。この沈黙がつらい。この空間から今すぐに逃げ出したい。
颯「…なんで?」
そんなことわかってるのに、聞き返してしまう。わかってるし、本人の口から聞きたくない。俺の予想が当たっててほしくない。
哲汰は思ったことをそのまま口にすることが多いけど、実際それは約半分で逃げて発言を控えるときがある。今はその可能性にかける。今この瞬間でも発言から逃げてくれないかと期待してしまう。
哲「俺、颯斗のこと好きだよ。」
「でも、俺はまだ颯斗を恋人としてみれてない」
「ずっと考えてた。なんで俺が好きで、俺のどこが好きなのか。前から聞こうと思ってたけどすぐ逃げていつも聞けなかったから、」
「俺は顔もかっこいいし、歌声もきれいだし、いい筋肉してる。でもいつもふざけて注意されてるし、よくウザがらみして怒られる。俺なんかのどこがいいの。」
何でそんなに自信なさげなのか。本人でも俺の好きな人をあまりよく思ってないのはイラつく。どこがいいのかなんて、ありすぎて困るくらいなのに。そんなに卑下しないでほしい。
颯「全部好きだよ。顔も歌声も筋肉も好きだし、注意されたらちゃんと反省してるのも好き。それなのにまた同じこと繰り返して注意されてるところも好き。」
「本当に。全部が大好きなの、なんでそんなに自信なさそうに自分を卑下するの」
「もっと俺を見てよ。好きなとこもちゃんと伝えるから、俺なんかとか言うなよ。」
「恋人なのに、、。やっと恋人になれたと思って嬉しくて。俺ばっかり好きでバカみたいッて思ったりもするけど。それもどうでもよくなるくらい哲汰が好きなんだよ。」
俺は本当に救いようのない馬鹿なのかもしれない。視線を向けると哲汰は少し辛そうな笑顔を浮かべて俺を見ていることに気づいた。俺は哲汰にはずっと笑顔でいてほしいだけなのに。気づいたら独走してしまっていた。
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作者名:雪柳 | 作成日時:2024年2月27日 14時