第五十四話 空腹 ページ17
粟田口の刀派は皆遺伝で毒舌なのか。
……いや、これ以上考えるのは辞めておこう。
余計な詮索は、しないでおかないと。
彼らの闇を知る権利は、私には無いと思う。
知りたいといえば、ぶっちゃけ言うと知りたくはない。いや、気になるけども。
一番気になるといえば…
「五虎退、本っ当に何にもされてないんだな？」
「はい、何にもされてません！」
「ねえなんで私が五虎退に何かする前提なの酷くないか」
「主、どうどう」
「私は馬じゃない」
私をたしなめるのはお留守番してるはずの清光だ。
本刀曰く、
「俺だけ留守番はどうかと思う」
だそうだ。
いや、うん、そっそうだね…？
困惑しながらも同意した私は鶴にデコピンされた。
まって、痛い、めっちゃ痛い、何この刀ほんとに平安生まれ……？
因みに痛みに悶えた時間は五分くらい。
下手したら十分掛かるんじゃないかって尋常じゃない痛みから逃げる時に考えてた。
因みに鶴は五虎退の虎と清光に怒られてた(本体を置いてきてくれて良かったって何度思ったか)
「お腹すいてしまったので屋敷に戻ってもよろしいかな、何かをお腹に入れないとお腹と背中がくっついてしまうよ」
「弥勒様、お腹と背中がくっついちゃうんですか…？」
「ごめんなさい私が悪うございました」
五虎退のきらきらとした眼を見た私は土下座しそうな勢いで謝った。
そうじゃないと、この子の兄に殺されるだろう。
だって、薬研藤四郎の目が人を殺しそうな目をしてて怖い。
いや、人に恨みもってんならそうか、今更じゃないか。
「───おや、お客さんかい？」
「！院長！ 寝てなきゃだめだろう！」
「ガキのアンタに心配されちゃ子供達が不安がるだろ、それにもう大丈夫さね」
「ハナさん、腰でも痛めたの」
「あたしはまだそんな歳じゃないわ！ 誰だい失礼なこと言ったの！ ……って、ミコちゃんっとこの骨董ホイホイ娘じゃないか」
「人の事をゴキ〇リホイホイみたいに言わないでよ」
勝気過ぎるこのご婦人、名前はハナさん。
本名は知らない。
母さんの知り合いらしいけど、怒らせたらダメな方なのはよく分かる。
……そして、だ。
「お腹がすいた」
「主そればっかだね」
「本当のことだ」
「お腹がすいたならうちで食べていきなよ、ミコちゃんの娘なら歓迎だよ」
「ゴチになります」
というわけで、突撃隣の昼ご飯です。
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