いずれ地獄でお会いしましょう【へし切長谷部】

君を選んだ理由 ページ24

腕の中で
泣き続ける歌仙は

小さな子供のようだった

『今まで苦労かけてごめんね』

彼の背中をそっと優しく撫でる

割れ物を扱うかの様に

「あるじっ…」

『…私が歌仙を選んだ理由』

私の第一刀…
初期刀を歌仙兼定にした理由

『貴方は知りたい？』

歌仙へ問いかけると


彼は体を離し私に向き合う


「あぁ…なぜ…僕を選んだんだい？」


5分の1の確率で選ばれた歌仙

加州、山姥切、蜂須賀、陸奥守
そして歌仙

どの刀剣もかっこ良かった

『ぶっちゃけ、どの刀でも良かったんだ』

審神者を始める前はそう思っていた

『でも…いざ選ぶって時に』

自然と歌仙を選んでいた

見た目や声
刀剣としての強さ、逸話

そんなのは全く関係なかった

『結局…感覚的な判断だったんだけどね』


その時の歌仙の真っ直ぐとした

姿勢

目

心に

私は打たれたんだ


『きっと最後まで共にいてくれるんだなって』

私を裏切らない気がした

「…そっか」

『貴方を選んで良かった』

心からそう思える

『ありがとう歌仙』

「こちらこそ」

大切な君を沢山傷付けた

でも歌仙は
私を一度も裏切らなかった

『優しすぎるよ…ば歌仙』

「ばか…せん？
主の口からそんな汚い言葉が…
雅ではないね…」

私の頬を両手で引っ張る


『いひゃい…はなひて』

「はは…主が可愛くてつい」

なっ？！

可愛いなんて…
よくそんな恥ずかしい言葉を簡単と…！


「主…」

突然、真剣な顔をする歌仙

『なに？』

「口付けしてもいいかい…？」

真っ直ぐとした瞳で見つめる

その目で見られると
どうしても逃げられなくなる


ずるいよ…歌仙


コクリと首を縦に振り
目を瞑る


「愛してる」

優しくそっと触れるだけのキス


ほんの一瞬だったけど

その時間は甘くて幸せだった


『…私も…』


愛してる


そう言いたかったのに


「元気になったみたいだね？歌仙君」



言えなかった

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