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「おお、ライムジュース」
「お前起きてたのか」
「っつーかサングラスちょっと割れてね？」
食堂へ入れば話しかけられる。
思わずサングラスを触って確かめると、端が割れていた。
「うわっ、最悪だ」
今の思い気分では、何に対してもイラついてしまう。
俺は呟いて、ドンと音を立て椅子に座った。
「えっ」
聞き慣れた声。ここのクルーじゃ珍しい高い声は案の定Aのものだった。
彼女が入ってくる瞬間に機嫌悪く座る俺を見て、いつになくしおらしかった。
色々言いたいことだらけだったが、俺は黙々と出されたパスタを食う。
「ごっそーさん」
まだ口に物を含みながらもルウに例を言って皿を出す。
そして逃げるように部屋へ帰った。
「……謝んねェと」
本当はわかっている。ならず者と言えど海上で仲間を大切にしない奴はダメだ。
「ごめん」「悪かった」「すまねェ」
何度か呟いて、謝る練習をしてみるがしっくりこない。
どんだけ悩んでいても眠い時は睡魔には勝てず、
戦闘員が寝不足じゃダメだと自分に言い訳し俺は寝た。
そして翌日の朝に、お頭の「野郎ども！島が見えたぞ！」というけたたましい声に起こされた。
今は「うるせェ！」と言い返す気力はなかったし、
かといって一緒に喜ぶ気にもなれなかった。
頭が重い。ところどころ体の節が痛む。
でも、島に店があるなら好都合だ。
Aの好物やら好きそうな可愛いものでも買って謝ろう。
そしたら案外アイツは気にもとめておらずに
「いいよ」と一言返すのではないか。
きっとそうだ。そう思い込んだ。
昨日、普段着を着たまま寝てしまったことに気がついた。
いつもの帽子に適当なシャツとズボンを履いて島へ降りる。
一番デカい土産物の店。
そこそこ栄えた島だから服でも買うか、などとは思わずそのままそこで
可愛らしいぬいぐるみを買った。
アイツの好みかどうかは分からない。
そもそも、俺はアイツの好きな動物も好きな色も、よく知らなかったと思った。
女は可愛いのが好きなんだろ、ピンクのぬいぐるみでいいか。
そんな軽率な考えでこのピンクのテディベアを買ってしまった。
Aは、俺を大切な仲間だと言った。
怪我をしたら悲しいと言った。
そこまで思ってくれている仲間に、俺は酷い対応をした。
自分のことを優しいなどと思ったことはないが、そこまでクズだとは思っていなかった。
というか、無意識だったんだ。
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作者名：二段ベッド | 作成日時：2022年10月1日 23時
