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「えっ？」
「なんで、お礼なんて言えるの？」
僕が呆然として声を漏らすと彼女は不思議そうにまた聞いた。
「……嫌じゃないの？」
「いえ、先輩からアドバイスを頂けたならお礼を言うのが筋というか……」
「別に意地悪したかったわけじゃないけど、
自分より見た目弱そうな私からアドバイスなんて貰ったら嫌味とか皮肉とかって思うでしょ？
むしゃくしゃしたのが原動力になってくれればそれで良かったんだけど」
まさか、そんな素直な感じに返されると思わなかった。
そう言われて僕や周りの人ははAさんを誤解していたのだと思った。
恨まれる役を買ってでているというか、
この人はサボりなんてしたことないんじゃないかってくらいに真面目で
誰よりも仲間思いなんだ。
別にそれを理解して欲しいわけでもなさそうで、よく分からないがいい人、ということだけは感じ取れた。
「そんなことは……」
「……真面目。それでよくガープさんの無茶苦茶な特訓についていけるね。
君のことまだまだよく知らないけど、応援するよ」
好意的な発言にドキリとする。
応援がなくたって頑張るのが正義の海軍としたら当たり前かもしれないが、
僕は誰かに認めて欲しくてがむしゃらに特訓していたのかもしれないと今更自覚した。
「ありがとうございます！」
45度の礼をすると、ふっと微笑まれて彼女は去る。僕は一人になった。
なぜだか口角が上がるのがとまらないままだ。
「おい、コビー！お前あのサボり魔と話してたよな！」
なーに仲良くしてんだよ、何話してたんだ？」
僕が礼をした頭をあげられないのを見てヘルメッポさんはうげぇ、とあからさまに嫌そうな顔をした。
「真面目だって褒められちまったか？」
皮肉のような言葉を額面通りに捉えてしまってもいいと言うほど図星だ。
「はい！」
「そりゃアイツと比べたら大体の奴ァ真面目だよ……」
「いえ！彼女は……Aさんは誰よりも真面目に鍛錬してるよ！」
僕の熱弁が始まりそうになるとヘルメッポさんは再度嫌そうな顔をして話を誤魔化す。
「コビー、お前って好きな奴の話になると急に喋りまくるよなァ……。
ほら、麦わらのルフィとか。俺ァ今でもトラウマだぜアイツの破天荒さ！」
「好き……好きな……」
彼の言葉が引っかかる。好きな奴、好きな、好き……。
僕は彼女が好きなのか？あの短時間で惚れたのだろうか。
わからないまま顔を赤くすることしかできなかった。
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作者名：二段ベッド | 作成日時：2022年10月1日 23時
