終わり ページ20
「お……おう？」
ヘルメッポは情けなく狼狽えた。
ここでそうだ、と自信を持って言えたら格好良かったかもしれない、と
少しだけ後悔をしたが後の祭りだ。
「なァんて……」
彼の声と意図せず被さって、Aのおどけた声が響く。
「だ、だからッ！俺はお前のことが好き……だ」
ヘルメッポはガタン、と音を立てて立ち上がり、目を見てそう告白した。
痺れを切らしたような態度を取ってしまったと二度目の虚しい後悔をしている内に
彼女のか細い返事が聞こえる。
「それがもし……本当なら、喜んで」
赤く染まった彼女の顔を彼は一瞬だけ覗いて、その後すぐに目を逸らす。
直視なんて出来なかった。
「……嘘なんてつかねェよ」
二度も同じように告白をする勇気がなく、彼は口を噤む。
「それと、A定食。特別に少し多くしておきましたよ」
溌剌と笑いながらも赤面して、はにかみながら彼女は
コビーの注文を聞いてまた厨房へと消えていく。
「……ヘルメッポさん、おめでとうございます！」
先程まで黙っていたコビーがヘルメッポの肩を掴んで祝福する。
「なァ、あれ本気だと思うか？」
「思いますよ！どう見てもあれは本気でした！」
「俺はよ、未だに信じられねェ」
「嘘だと思うんですか？」
「いや、そうじゃねェがよ……
お前より情けなくて弱い俺が本当にお前を差し置いて惚れられるかって話だ」
彼は感極まって普段口にしないようなことを口走った。
コビーは焦ったような顔を一瞬するが、すぐに笑みを漏らす。
「……ふふっ」
「はァ？何笑ってんだよ」
「Aさん、ずーっとあなたのことが好きでしたよ」
「……どういうことだよ」
「だって、ガープさんはどうかは分からないけど他の人は皆
ヘルメッポさん達が両思いだってこと知ってましたから」
そう言われて「はァ！？」と焦った声が食堂から厨房までに一番大きく響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：二段ベッド | 作成日時：2022年10月1日 23時
