・ ページ17
「ってお前コビー！どぎつい怪我してんじゃねぇか！早く医務室行け！」
風呂に入ろうと二人が服を脱ぐと、コビーの背中には大きな切り傷があった。
「あっ……そうだ、枝に引っかかっちゃって……」
服が汚れちゃった、とばかりにコビーは困った顔をする。
「いいから医務室行け！」
「一昨日の訓練で怪我した人も多かったし、僕の怪我も大したことないから自分で手当してくるよ。
今日は個室のシャワーだけ借りようかな」
ヘルメッポの言葉に彼は従ってくれなかった。
それに少し苛立ち、ヘルメッポは医務室へとコビーを引っ張って行った。
「わっ、ヘルメッポさん。僕は大丈夫ですから」
「大丈夫じゃねぇだろ。明日だってきつい稽古があるんだ。
傷口開いて動けなくなっても知らねぇぞ！
それにお前が将来出世した後も傷が残ってたら逃げ傷みてェに見えんだろ！
一番の出世頭なんだからしっかりしろ！
それに戦場じゃ浅くても傷口ひとつで感染症が広まることだってお前も知ってんだろ。
医務室は怪我してる奴のためにあるんだ、頼ってやれよ」
コビーの服を軽く引っ張って、医務室の前まで連れていくまでずっとヘルメッポは説教もどきをしていた。
それをコビーは素直に聞く。
それからハッとして、「ああ、悪ぃ。自分のことはもっと大事にしろよ」と言って、
金髪をたなびかせた彼は大浴場へと戻って行った。
(柄にもねぇことしちまった)
ヘルメッポは今の自分の判断が正しいものであったと確信しているが、お節介だったとも思えた。
コビーなら感染症にかからないくらい適切な処置ができるだろうに。
(ま、考えるのも俺らしくねぇな)
無理やり気持ちを切り替えて、いつもより短く風呂から出る。
七光りをしていた頃に比べれば設備もそこまでよくないし、
正直いって身も心もボロボロだったが、ヘルメッポにはやはりたったひとつの生きがいがあった。
それに心を踊らせながら、今日も食堂へ向かう。
「あ、ヘルメッポさん。珍しいですね、ひとり」
食堂の彼女が冷水を持ってくる。
一番乗りだったからなのか、話しかけてきてくれたことに心臓が跳ねるのがわかった。
「あぁ、まぁな」
ぶっきらぼうに返してしまう自分にほとほと呆れる。
そういう歳じゃねぇだろ。話を続けろよ、俺。
「……さっき医務室に行ったら、コビーさんがヘルメッポさんのこと言ってましたよ」
「へえ、なんだって？小言ばかりのおっさんだとかなァ」
ヘルメッポは自嘲気味に自虐した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：二段ベッド | 作成日時：2022年10月1日 23時
