終わり ページ15
Aはなんと言っていいかわからず、何も返せないままだった。
誰もがこれ以上喋っていい空気ではないと感じ取り、沈黙に飲まれていた。
Aは自分がこの沈黙を破ることを待たれているのだと察し、
とりあえずその場しのぎで返事をしようと思った。
「わ、わかりました！」
思ったより大きい声で返事をしてしまい、彼女は内心(やってしまった……)と後悔した。
ルフィはというと、一瞬だけきょとんとした顔をしてから
すぐに太陽のような笑顔を取り戻し、
「そうか！ありがとな！」
と返す。そのやり取りにクルーたちは驚くことしかできなかった。
「ルフィ、アンタやっぱりAのこと好きなのね！？」
「ルフィ、おまえやるなァ！
でもそういうのはちゃんと「好き」って言葉にしねぇと伝わらねぇぜ！？」
すかさずナミとウソップが面白そうにルフィに接近した。
「おう！好きだ」
「ストレートねぇ……」
「それにさっきも好きだって直接言ったぞ？」
「はっ！？言ったのかよ！」
ルフィはなんでもないことかのように返した。
さっきの「好き」がクルー全員に向けられたものでは無いということをようやく理解し、
Aは困惑しながらも照れる。顔は真っ赤に染まっていた。
「こういう時ってこういうんだったよな！
A、好きだ！付き合ってください！」
ルフィは慣れない敬語を少し使い、告白の言葉を口にした。
いつか見た物語で学んだのか、はたまた誰かに教わったからなのか、
どうして彼がそんなスタンダードな言葉を知っているかは分からないが、
今彼が言った言葉は嘘偽りのない心を表していた。
「よっ、よろしくお願いします！」
願うことすらおこがましいと思っていたことが目の前で起きて、
Aは困惑してやまなかったが、ルフィの目があまりにも真剣なので
茶化して逃げることなどできなかった。
「おう！よろしくな！」
二カリ、と彼は笑って返す。
怒涛の展開にクルーたちの目線は彼らに釘付けだった。
向けられた好意が自分だけのものだとわかったAは、
遠慮がちながらも彼と付き合うことを選んだ。
恋愛に不慣れな二人の、奇妙は恋人関係が今、始まった。
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作者名：二段ベッド | 作成日時：2022年10月1日 23時
