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「あはは、ありがとうございます」
Aは取ってつけたような笑顔で返す。
何を今まで勘違いしていたのだ。一人で舞い上がって馬鹿みたいだ。彼女は自己嫌悪がやめられなかった。
それに、ただの「仲間」に対する「好き」という土俵に
自分はようやく立てただけのような気がして、自分がいかに浅はかかなどを考えてしまう。
「いやァ、それにしても今回はやばかったよな！」
「ああ、おれでもわかるくれェ厚い雲だった」
ウソップとサンジが会話する声が聞こえる。
「あんなのにビビってたのかアホコック」
「あァ！？さっきからてめェは突っかかってきやがってよォ！
テメェだってナミさんに言ってもらわなかったら今頃船ごと転覆だ！」
「おれは刀でぶった斬る」
「できんならそうしてみろよ！」
「おいおいおい！喧嘩してる場合じゃねェぞ！見ろよアレ！」
二人の喧嘩などいつものことのように流すウソップが、今回は仲裁するように彼らの間に立った。
「海王類くらいでけェぞ！？」
ウソップの人差し指の先には大きな魚がいた。ギョロリとこちらを見る無機質な白と黒の目が、
我らが船を捉えて離さない様子にAとウソップは思わず抱き合った。
「うわあっ！？なんですかアレ！？」
「ありゃここいらの海の主だろ！？くそっ！ここはサンジたちに任せておれらは死んだフリだ！
見てろよA！このキャプテンウソップがプロの死んだフリを見せてやる！」
あたふたとする二人をよそに、いつの間にかあの海王類は海に沈んでいた。
ルフィのパンチで一発であったのだ。彼らの心配は杞憂に終わった。
しかし、いつもの陽気な笑顔がルフィの顔に見あたらなかった。
「……なんか、嫌だ」
彼は呟く。見慣れない彼にクルーたちはどよめいた。
「な、何がですか？」
「……おまえが誰かと抱きついてんの見ると、ムカムカする」
その言葉に更に船内がどよめいた。
「ルフィ、それって……！」
ナミがまさかの展開に顔を赤くする。
「おいおいルフィ、おまえにも遂に春が……！？」
ウソップは手に汗握る展開に目を離さない。
「愛しのレディを独占しようだと……！」
サンジはただただ色々な感情に見舞われ唖然とする。
ゾロは黙っていたが内心驚いて、「いっ……！？」と顔を引き攣らせていた。
「ルフィ……さん？」
「……なんでもねェ！それはおまえの自由だ！」
ルフィは気持ちを切り替えたかのように顔を明るくした。
いつもの笑顔が心做しかぎこちない。
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作者名：二段ベッド | 作成日時：2022年10月1日 23時
