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アットホームでおちゃらけた雰囲気に紛れて忘れかけてすらいたが、
Aはここが海賊船で、ふざけている彼らが海賊であることを思い出した。
「ど、どうしよう……」
戦えない自分の居場所がないのだと痛感させられるような気がして、
Aは近くにあった樽を一生懸命持ち上げた。
「よいしょ！」
そして、海軍目掛けて投げつける。
海軍の人は悪いことなんて何もしてないのになあ、と彼女は少しだけ罪悪感を覚えた。
つくづく海賊に向いていない性格だ。
一瞬驚いたような顔をされたが、次の瞬間Aは海兵たちに襲いかかられる。
「麦わらの一味か！？懸賞金もかかってないぞあの女は！」
今まで守られる側であった自分が、
海軍に立ちはだかっているという事実が怖い。
負ける気しかしないし、足を引っ張っている自覚もあった。
そもそもあの樽が大切なものだったらどうするつもりだったんだ。
私はもう、後戻り出来ない。
Aは色々な心配事に思考を奪われていた。
さっきまで一般人だった人間としては当たり前の反応だ。
「おいおいおい、お前も戦えるのかよ！？無理すんなよ？」
足が震えているAを見兼ねてかウソップが心配の声をかける。
かく言う彼も海兵に対して怯えている様子だ。
「なんて勇敢なんだ！」
サンジは心配の色を顔に浮かせながらもメロメロとAを褒め称える。
ゾロは少しだけにやりと笑った。
彼は弱いと思っていた彼女が筋を通そうとした気持ちを汲んだのだ。
「へえ……！」
そんな彼らの反応がAには嬉しくて、
非戦闘員であるナミを守ろうと彼女の前の海兵にAは攻撃をしかけた。
「……あれ！？」
しかし戦闘など経験したことにない彼女は海兵に切りかかられそうになる。
それを見てクルー全員が海兵に攻撃出来る体制をとった。
次の瞬間海兵たちは敗北するだろう。
しかし彼らを倒したのは近くにいたクルーたちではなかった。
「ゴムゴムのォ……！」
怒気がほんの少し含まれた声が遠くから聞こえる。
「ガトリング！」
ゴムの体が海兵たちを打撃して、あっという間に倒してしまう。
「ルフィさん！……どうもありがとうございます」
Aは歓喜の声をあげそうになる。が、自分が活躍しようとでしゃばって足を引っ張ったことを思い出し口ごもった。
初日からこんなでは先が思いやられる。
しかし、彼の口から出た言葉は予想外に優しいものだった。
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作者名：二段ベッド | 作成日時：2022年10月1日 23時
