6 ページ28
私が手に取り読もうとすると、電話がかかってくる。
先生からだ。
「編集長、佐野先生からです。電話に出てもいいでしょうか？」
「出なさい」
「もしもし、お疲れ様です。講談社柊です」
「今日のドルマ美味かった」
「ありがとうございます。じゃなくて先生どういうことですか？食事のテーマの小説書くなんて！恋愛小説を書いてくれってお願いしたんですけど！」
「あ、柊明日お昼にチーズダッカルビが食べたい。作って持ってくるんじゃなくて厨房貸すからその場で作ること。いいな？」
「分かりましたけど、先生私の質問にちゃんと回答してください」
「は？お前俺のプロット読んでないのか！松若さんに送り付けてるぞ？」
「なんで最初に編集長なんですか！今の担当は私です！」
「お前読んでないな？読めばわかるから。とりあえず読め」
「柊、ほらしっかり読め」
編集長はさっきの態度とはうって変わり笑顔で原稿を渡してくる。
グルメ通話(仮題) 佐野晶哉
偏食家である小説家物部和徳35歳。新しい編集担当の結城虹那が依頼してきたのはグルメ小説だった。最初に書き上げた原稿をみた結城は味覚感覚が壊れていると和徳の小説をこてんぱにいい、和徳を怒らせてしまう。和徳は歳下に怒られたことに腹を立て、担当を変えて欲しいと編集長に願い出る。だが、次の日結城は無理やり和徳に手料理を押し付ける。そして「先生の味覚感覚私が直します」と宣言する。物部は断るものの、毎日毎日ご飯と手紙を持ってきては置いて帰っていく。食べ物を粗末にすると殺されるという思いがある和徳は結城の料理を食べ始める。偏食が直せそうだと感じた和徳は結城を家に呼び、ご飯を作らせるようになる。そして和徳は自然と恋心を持つようになり2人は次第に惹かれあい、感覚が戻った時に和徳は結城に想いを告白する。2人は結ばれ、ハッピーエンドになり、小説も大ヒットしたというところで終わる。
「えっ、、これって、、、、」
「読んだか。この小説にはお前が必要だ。すぐ家に来い」
「はい、すぐ向かいます。失礼します」
「柊、よくやったな」
「編集長、、、、、」
「上出来だよ、実は佐野先生恋愛テーマにつまづいてたんだよ」
「そうなんですか？」
「だから担当を女にしたいって思ったんや。まーかけたみたいでよかったわ、早く行ってこい！」
「行ってきます！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 118人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きい
| 作成日時：2020年4月22日 23時
