編集者カノジョ【Seiya.S】 ページ21
「自由に切ってください」
「え？ホントにええの？この綺麗な髪勿体ない」
「いいんです。見返したいんです。私を振った元カレを」
「かしこまりました。俺に任せてください」
元カレと付き合いだした頃に通い始めたこの美容室。
誠也さんはかっこよくて面白くてとにかく二三歳しか違わないのに腕がよかった。
誠也さんはなんで別れたん？とか詳しく聞かず、楽しいことあった？みたいな楽しげのある会話をしてくれる。
「あ、Aちゃん。これあげるよ」
そう言われてもらったのは有名写真家の展覧会のチケット
「いいんですか？」
「いや、実は多く取りすぎて。Aちゃん広告や雑誌の仕事してるから好きやろなって思って」
「好きです！」
これが恋愛関係の始まりであり、たまたま展覧会で鉢合わせをして付き合うようになった。
誠也に呼ばれてきた大会。
はあ、私は彼氏が女子にモテてる姿を見なきゃあかんのか。
やだな〜帰ろ。
「待って、なんでおらんなるん？気づいてるやろ？」
「邪魔しちゃ悪いかな〜と」
「邪魔だったらそもそも呼んでへんし、集客とか困らんし！」
「常連さんいっぱいだもんね」
「んーそうやなあ〜ひいきにしてくれる人も多いし。絶対優勝してその後にAの髪綺麗にしたるから見とって」
「うん」
私たちは日頃凄く会ったりしてるわけでもない。
私は1週間前にsweet編集部に移動が決まり、大忙し。
誠也は大会も近くカットの練習に明け暮れている。
「どう？彼氏の腕前は」
「凄いな〜って」
「惚れただけあるわ〜って」
「んー1番惚れてるのはそこじゃないんですけどね」
「Aちゃん編集部移動おめでとう」
「ありがとうございます。するとしたらヘアカタログがよかったんですけど、思いっきりファッション誌でした。大我さん自分のやつは？」
「今ねー休憩中。やっぱあいつすげえわ。俺には叶わない」
誠也は決勝まで駒を進めなんと優勝した。
嬉しそうにする誠也。
インタビューを受ける。
「あ、宝島社さん。現MonoMax担当で明日からSweet編集担当の彼女がお世話になってます。今回受賞できて本当に嬉しいです。この大会で優勝するのは美容師になってからずっと目標でした。僕はお客様に喜んでもらうために毎日毎日技術を磨いています。こうしてここまで来れたのも支えてくれた人たちのお陰だと思っています。あの、ちょっとAこっち来て」
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作者名：きい
| 作成日時：2020年4月22日 23時
