2.『点検中』 ページ2
丁寧に点検していると背後から声が降ってきた。
それは先ほど見ていた、旅芸人シルビアのものだった。
シルビア「ねえ、貴方。何をしているの?」
「うわあ!…いってて」
シルビア「あら!突然声かけてごめんなさい!大丈夫?痛む?」
「あーいや。大丈夫っす。あ」
突然話しかけられて驚いてしまった。
手を差し伸べてくれたのでその手を取った。手袋越しでもわかるほど、男らしい手だった。
その手に触れた後、もう一度彼の顔をよく見つめた。
あ、この人男だわ。
シルビア「?アタシの顔、何かついてる?」
「あ、いやーそのー。綺麗だなって」
シルビア「フフッ、男でも手入れは大事よ。特に舞台に立つのならなおのこと」
「あ、納得です。そういえば何をしてるか聞いてましたよね、小道具の点検ですよ」
シルビア「へー!素敵ね。貴方が毎回やっているの?」
「そうですね。まだ、半月も経っていませんが」
シルビア「短い期間に信頼を得たからこそみんなが安心して人を笑顔にするお仕事ができるのね。素敵だわ」
そう言ったシルビアさんの顔はどことなく慈しむような優しい笑みを浮かべていた。
その笑顔にどことなく安心した私は、点検を再開した。
釘も出ていないことを確認して軽く乗ってみた。
よし、大丈夫だな。鉄棒のブランコ乗って点検して異常はなかった。
「これでおしまいっと」
シルビア「お疲れ様!貴方のお仕事っぷりすごくよかったわ!」
「あ、ありがとうございます」
シルビア「今夜のショーは是非貴方も客席で見て頂戴ね♡」
「わかりました」
彼の笑顔に笑い返し、私は裏方へと戻っていった。
その笑顔に彼が驚き、少し頬を赤く染めていたことは彼しか知らない。
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作者名:トラ若 | 作成日時:2020年4月10日 0時