どうも、落ちこぼれです。

人の心は移り変わる？違う、本音を隠すのが上手いだけ ページ12

それからの日々はまぁ、酷いものだった。





私が使ってみせた術式を見て父親は最初に真っ青になり、次いで怒髪天を衝く形相になった。



「何故お前がこの術式を使うのだ…！
相伝の術式だったら良かったものを……



……興醒めだ。今日からお前は女中の部屋で暮らせ。


落ちこぼれにはお似合いの場所だろうよ。」




そして母もそうだった。



「あんたを産んだのが私の後悔よ。
顔も見たくない｡この無能が！」




そう叫ぶと私の頬を張り飛ばす。




女中に至っては、仕事を私に押し付ける始末｡




「無能なら無能なりに、掃除でもしたらどうなの？」





最初は理解できなかった。みんなとても優しかった人達だったから｡




今まで怒鳴られたことも、手を上げられたこともなかったから。




だから泣いた。泣く術しかなかったから。





「ねぇね、だいじょうぶ？ないたらやーよ。」




そんな私に寄り添ってくれるのは、一歳年下の弟、諒だけだった。



諒は泣きながらも、小さい手を伸ばして私の涙を拭う。




昔から諒は私に懐いていて、部屋も一緒だった。
部屋を引き離された時も、泣いていた。




そんな弟に心配を掛けたくはなかった。



だから笑う。



『うん｡だいじょーぶ！
お姉ちゃん、諒のこと守れるぐらい強くなるよ！』




「ぼくも！ねぇねをまもれるぐらい、つよくなるよ！」




『あはは、楽しみだなぁ。諒はぜったい強くなるよ。』




予感に近いものだった。弟は相伝の術式を持っていると。





そして、その予感は当たることになる。





その一年後。









諒は相伝の術式を使ったのだ｡

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