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影の獣 ページ8

レイリスの家を出てもう数十分…

追ってこないからバレてないのかな。

レイリスの事だから寝てる間にGPSとか埋められてるかもって思ったけど…

そんなことはなかったのかな…

まぁいいや。

自由な今を楽しまなきゃ!

風が運んでくる色んな匂いが懐かしく感じれる…

耳に届く川の音が心地いい…

ガサッ…

久しぶりに嗅ぐ匂い。

人だ。

人間だ。

鉄の匂いもする…

肉の匂いも…

武器を持ってる…

鉢合わせたら殺される…!

今私は無防備だ。

単独で。




勝てるわけない!




逃げるしかないかな…

でも音で気付かれるよね…

ああどうしよう!


__みいつけた__


低い声。

人間の男だ…

「影の獣じゃあないか!これは大物だぞ…!魔獣がこんなところで一人とは…馬鹿な奴も居たもんだなぁ!さぁ、俺の血となり肉となってもらおうかぁ…??」

ガチャッ…

額に冷たい銃口が突きつけられる…

足がすくんで動けない…

走って逃げてよ。

なんで動かないのよ!

男が引き金を引き、森に銃声が響いた。

頭から流れる温かい液体。

ぽたりぽたりと滴るたびに、意識が遠のくのが分かる。

逃げられなかった…

目の前の男は既に捕獲用の網を持っている…

もう駄目だ…

眠い。

疲れた。





__いっそ死んだっていいじゃない__





…死のうか。

全て諦めて。

レイリスなんてどうでもいい。

ただただ…今は痛くて辛くて怖いから。

やめたい。

痛みから

辛さから

怖さから

逃れたいんだもん…

今まで頑張ってきたよ。

私。

だからさ…









『私死ぬよ……レイリス…』









遠のく意識の中で、ぽつりと呟いた、大好きなあいつの名前。

隠し通すつもりだったけど、死ぬ前に伝えたかった。

けどさ、伝えるのも全部諦めるよ。

ばいばい。








Aの意識は、そこで途絶えた。

それと同時に

男の首は跳ね飛ばされた。

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作者名: | 作成日時:2021年2月7日 23時

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