3回まわってワンと鳴け ページ5
side:坂田
『犬を飼いたい…そうだわ。坂田、お前が犬になりなさい』
坂田「……………………へ？」
うちのお嬢様がまた滅茶苦茶なことを言い出した。
『あら、聞こえなかったかしら？犬になりなさいと言ったのよ』
坂田「や、聞こえてましたけど……」
憂いの雨模様が続くアタナシア王国。
その天候のせいでジメジメとした気分を変えようと、久しぶりに行われた温室でのティータイムの最中だった。
おそらく、外に出られない日々が続いて読書にも勉強にも飽きてしまったのだろう。
そこで目をつけたのが僕。要は暇つぶしってことだ。
『まふまふ、』
まふ「はい。お呼びでしょうか」
A様がその名前を呼ぶと、数秒も待たずして隣に白髪が現れる。
ずっと不思議に思ってたんやけど、その速さは何なん？
呼ばれるってこと予知でもしとんの？
いつしか聞いたのだが、そらるさんやうらさんも同じくらい速いらしく、疑問に思っているのは僕とセンラだけらしい。
『坂田に似合う首輪を持ってきてちょうだい』
まふ「首輪、ですか……？」
『そうよ、首輪』
さも当然のような態度のお嬢様に対して、まふは話の流れが一切掴めていないのか、目をぱちくりさせている。
やがて、用途だけでも知っておこうと思ったのだろう。「何故なのかお聞きしても…？」とおずおずと尋ねた。
『？ 坂田が犬になるからよ』
あっけらかんと答えるお嬢様。
彼の赤い目から、すっと光が消えたのがわかった。
まふ「……お嬢様？まず、人間と犬が異なる生き物であるということはご存知で…？」
『当たり前じゃない』
まふ「で、では、犬が人間になれないことは理解されておりますか？」
『もちろんよ』
あぁ……頑張れ、まふ。
きっと、まふもどうしてこんな当たり前のことを説かなければいけないのだと、そう思っているに違いない。
何とか考え直してもらえないかと彼が懸命に語りかけるのを遮るように、A様が『そういえば、』と口を開く。
『白毛に赤眼のうさぎはまだ見たことがない＿＿』
まふ「すぐにお持ち致します」
危険を察知したまふが颯爽と頭を下げ、温室を逃げるように出て行った。
もはや清々しいほどの手のひら返し。
しかし、今のは賢明な判断だったと思う。もし逆らっていたのなら彼も自分と同様、首輪の着用を強要されていただろう。
『きっと似合うわよ、首輪』
純粋な心から発せられたその言葉が逆に辛くて、苦笑いしか零せなかった。
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Tomo(プロフ) - 月音さん» ありがとうございます！何か抱えてそうな雰囲気を感じ取ってもらえて嬉しいです〜！ (2022年4月24日 21時) (
レス) id: 90d619c3c8 (このIDを非表示/違反報告)
月音 - はぅ！めちゃくちゃ好み!ワガガマ具合とか、そんでもって、絶対何かを抱えてそうな雰囲気とか大好きです!更新楽しみに待ってますね!頑張ってください! (2022年4月24日 7時) (レス) @page17 id: 92b5bfb4f2 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまさん - コメント返してくれてありがとうございます！出掛けてたからコメント返してくれてたの気づきませんでしたwすみません！これからも頑張ってください！ (2022年3月13日 16時) (レス) @page12 id: f9785f1ea6 (このIDを非表示/違反報告)
Tomo(プロフ) - しらたまさんさん» ありがとうございます！ (2022年3月13日 13時) (レス) id: 90d619c3c8 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまさん - とっても面白いです！『志麻のことぶっちゃったぁ』ってうらたさんに泣きついているのがとっても可愛らしくて好きですwこれからも体調に気をつけて頑張ってください！ (2022年3月13日 0時) (レス) @page12 id: f9785f1ea6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Tomo | 作成日時：2022年1月14日 20時
