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キィ…。と馬車が小さく軋む。
お嬢様と出会った時にも乗ったそれは、あの頃と何も変わらない。ただ、彼女が1歩、また1歩と踏み出した足が地面つくまで手を引くのはそらるさんではなく、他でもない自分で。
その俺はいつもの燕尾服ではなく、タキシードを身にまとっていて。
これからフィアンセとして彼女をエスコートするのだと、思い知らされているような気分だ。
そらる「それでは、定刻通りお迎えに参ります」
御者として王宮まで送り届けてくれたそらるさんとも一度お別れだ。頼れる人が減ると思うと少し心細い。
そんな俺を見かねてか、「大丈夫だよ」と御者席からそらるさんが優しく微笑む。
そらる「何があってもセンラ君なら大丈夫。それにA様も手助けぐらいはしてくれるだろうし……多分」
センラ「最後の一言ですんごい不安になったんですけど…」
そらる「まぁまぁ、そんなに気負わなくてもいいってことだよ」
センラ「……頑張ります」
弱々しく返すと彼は苦笑いを浮かべた。
こればかりは努力するとしか言いようがない。舞踏会、エスコート、ワルツ……何もかもが未経験の俺ができることと言えば、お嬢様の恥にならないように振る舞うこと。情けない話、それだけで精一杯なのだ。
『そらる、そろそろ』
そらる「はい、ではまた後ほど」
センラ君、と手綱を握り直したそらるさんがもう一度俺を見つめた。
そらる「A様のこと、よろしくね」
センラ「…………はい…」
大きく音を立てて馬車が走り去ってしまった。
馬車の姿が完全に見えなくなってから、お嬢様が手を差し出す。
『さぁ、センラ。私を完璧にエスコートしてちょうだい』
センラ「お嬢様の仰せのままに」
『あら違うわよセンラ、私のことはAと呼びなさい』
婚約者なんですもの、フリだけれどね。と彼女が笑う。
俺はその言葉に確実に動揺して。でも、それに気づかれないように、ただ頷くことしかできなかった。
王宮の大きな扉の隣にいた執事に招待状を渡す。
扉が開かれて会場の視線が一気に集まる。
「テレジア家より、センラ・テレジア様。A・テレジア様でございます」
さぁ、舞踏会の幕上げだ。
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Tomo(プロフ) - 月音さん» ありがとうございます！何か抱えてそうな雰囲気を感じ取ってもらえて嬉しいです〜！ (2022年4月24日 21時) (
レス) id: 90d619c3c8 (このIDを非表示/違反報告)
月音 - はぅ！めちゃくちゃ好み!ワガガマ具合とか、そんでもって、絶対何かを抱えてそうな雰囲気とか大好きです!更新楽しみに待ってますね!頑張ってください! (2022年4月24日 7時) (レス) @page17 id: 92b5bfb4f2 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまさん - コメント返してくれてありがとうございます！出掛けてたからコメント返してくれてたの気づきませんでしたwすみません！これからも頑張ってください！ (2022年3月13日 16時) (レス) @page12 id: f9785f1ea6 (このIDを非表示/違反報告)
Tomo(プロフ) - しらたまさんさん» ありがとうございます！ (2022年3月13日 13時) (レス) id: 90d619c3c8 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまさん - とっても面白いです！『志麻のことぶっちゃったぁ』ってうらたさんに泣きついているのがとっても可愛らしくて好きですwこれからも体調に気をつけて頑張ってください！ (2022年3月13日 0時) (レス) @page12 id: f9785f1ea6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Tomo | 作成日時：2022年1月14日 20時
