○ ページ34
.
坂田「あっ！こら、A様！まだ食べちゃダメって言うたやないですか！！」
『いいでしょ、お腹空いたんだもの』
坂田「僕やってお腹ペコペコやし……って、ダメです！口元にクッキー持ってこんとってください！！」
うらた「いや、なんで風呂に食べ物持ち込んでんだよ」
冬という季節なのもあって、まだ外も暗いような早朝。
カーテンで仕切られた向こう側から2人の言い争う声と冷静なツッコミが聞こえてきて、ハッと意識を取り戻した。
志麻「ふは、大丈夫か？ちょい意識飛んでたで」
センラ「…ぁ、ごめん……俺、体洗わせてる身やのに…」
志麻「気にせんでええんよ。朝早いし、志麻のマッサージも気持ちええやろ〜」
そう笑って俺の頭に添えた手に力を込める志麻くん。丁度よい圧迫感が伝わって、その心地良さに目を細める。
志麻「それに、今日はセンラにとっても大事な日やからな」
志麻くんは何気なく呟いたつもりだったのかもしれない。だが、その一言で勝手に体が強ばったのを感じた。
俺は今日、お嬢様の婚約者となる。
勘違いして欲しくないので言っておくが、本当に婚約者になるわけではない。あくまでも"婚約者のフリ"だ。彼女の隣に立ってエスコートする、ただそれだけ。
ただそれだけなのに、責任感で押しつぶされてしまいそうだ。
こんなに朝早く起きて、今こうして志麻くんに湯浴みしてもらっているのもその為。ちなみに、カーテンの向こうでお嬢様の湯浴みを手伝っているのは坂田とうらたんだ。
舞踏会に行く前に必ずすることらしい。彼の手付きは慣れたものだった。
志麻「あ、まーた体固くしてもうて。ほら、深呼吸してん」
緊張を悟られないようにと思っていたのに、俺に触れている彼にはそれが伝わってしまったらしい。頭の上から笑い声が降って来る。
センラ「……すぅ、……はぁ…」
志麻くんに言われた通りに大きく息を吸ってみると、バスルームに充満したアロマの香りが鼻腔をくすぐった。思考回路まで溶かしてしまいそうな甘い匂いに、体の力が抜けていく。
志麻「そうそう、リラックス、リラックス……大丈夫、センラなら大丈夫やで」
志麻くんに言われると、本当に大丈夫なのではないかと感じでしまうのだから不思議だ。
頭から肩へと移動したマッサージといい香りのアロマ。それから丁度良い温かさのお湯に瞼が重くなって、再び意識を手放した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Tomo(プロフ) - 月音さん» ありがとうございます！何か抱えてそうな雰囲気を感じ取ってもらえて嬉しいです〜！ (2022年4月24日 21時) (
レス) id: 90d619c3c8 (このIDを非表示/違反報告)
月音 - はぅ！めちゃくちゃ好み!ワガガマ具合とか、そんでもって、絶対何かを抱えてそうな雰囲気とか大好きです!更新楽しみに待ってますね!頑張ってください! (2022年4月24日 7時) (レス) @page17 id: 92b5bfb4f2 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまさん - コメント返してくれてありがとうございます！出掛けてたからコメント返してくれてたの気づきませんでしたwすみません！これからも頑張ってください！ (2022年3月13日 16時) (レス) @page12 id: f9785f1ea6 (このIDを非表示/違反報告)
Tomo(プロフ) - しらたまさんさん» ありがとうございます！ (2022年3月13日 13時) (レス) id: 90d619c3c8 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまさん - とっても面白いです！『志麻のことぶっちゃったぁ』ってうらたさんに泣きついているのがとっても可愛らしくて好きですwこれからも体調に気をつけて頑張ってください！ (2022年3月13日 0時) (レス) @page12 id: f9785f1ea6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Tomo | 作成日時：2022年1月14日 20時
