FBIと彼女 ページ42
埠頭に佇んでいると、背後からゆったりとした足音が近付いて来た。
「君も来ていたのか」
音が止み、耳に届いた声に振り向く。
「それは僕の台詞だ」
ニット帽に黒髪、碧眼…ここまで言えばもうお察しだろう。
「彼女は
幹部連中を全員あの世か監獄に送り込み
一応のケリが着いた今、改めて参りに来た
模範解答に、思わず息を吐いた。
少し期待していたのだ。
その口から、「彼女は死んでいない」なんて言葉が零れるのではないかと。
「これは?」
足元のユリを視線で指すと、目の前の男はああ、と口を開く。
「とあるCIA捜査官からだ
…といっても彼女は入院中で、ここに持ってきたのはジョディだろう」
そういえば、捜査中に事件に巻き込まれたと聞いた…最近までここに規制線が張られていたのもその関係らしい。
…詳細はあまり聞かされていないが
「お大事にとでも伝えてくれ
あと…ユリよりデイジーの方が良い、とも」
挑発気味に口角を上げると、赤井は驚いたという様に軽く目を見張る。
「ホォー…思ったより元気だな」
「は?」
元気?
まさか、引き継ぎと急な人員変更で3徹目の僕に喧嘩を売っている?
「…悪かった」
「ヒロのことか?…それは、お前の責任ではない。」
「いや、それもあるが…
今言っているのは
「…っ」
ヒュッと息が詰まった。
__
とある少年とFBIが持ちかけてきた作戦には、協力者がいた。
年齢・本名などは不詳
分かっているのは女性であるらしいこと
組織の一員…それなりに中央に近い人物で、組織の情報系統に精通していること
作戦では内部から情報を盗んだ上でデータベースを破壊する役割を担った。
「作戦当日まで我々以外に素性を明かさないことを条件に、協力を申し出てくれた」というジェームズ捜査官の言葉通り、ギリギリまで素性は明かされなかった。
最初は半信半疑だった。
その女が こちら側に協力する利点も、動機も不明。
いつ裏切るかも分からないし、最初から裏切るつもりかもしれない。
僕もそれを危惧して、アテナとの接触は少年かFBIを通した間接的なものばかりを選択した。
並行して素性を探ろうともしたのだが、組織の規模が大きすぎるのに対して情報が少なすぎて身元は特定出来なかった。
52人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とみーさん | 作成日時:2020年9月4日 2時