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__「…ジン、今なんて?」
任務を終えて拠点のひとつに戻れば、珍しく気の立っている彼女がジンに食い下がっていた。
「例の取引はリキュールに任せる。
金を確認次第、その場で撫切り…皆殺しでいい」
その言葉に彼女の視線はジンから_奥の壁に凭れて優雅に煙草を吸うリキュールへ
「私の仕事…横取りしないで?」
「…上の命令だ、横取りじゃない」
「いいえ、横取りよ。
貴方が
『青二才にはまだ早い』…だったっけ?」
「…フッ、
「っ……
早口で中国語だということ以外よく分からないが、どうやら一触即発というやつらしい。
カチャリ、と愛銃・ベレッタを真っ直ぐリキュールに向ける彼女
さして気にもとめずに2本目の煙草を取り出すリキュール
僕が部屋に入ってきているのに気づいたジンはフンと鼻を鳴らして、彼女に向き直った。
「銃を下ろせテネシー…迎えが来ている。
リキュールも煽るな。
これはラムの命令だ…分かるよな?」
彼女は銃口はそのまま、視線だけジンの方を向く
次いで僕を瞳に映して、
観念したようにふっと肩の力を抜いた。
「…ハイハイ、分かりましたよー!
好きにすればいいじゃん、もう知らないから!
帰ろう、バーボン」
先程までとは一転、
いつもの調子に戻った彼女がくるりと踵を返す。
「…バーボン、例のものは」
嫌悪感剥き出しでこちらに視線すら寄越さないジンに、USBを投げ渡した。
「約束のものです。
不備はありませんが、気になるならご自分で確認するなりなんなりご自由に」
「チッ…」
「任務完了です。
テネシーを連れて帰っても?」
「…ああ」
「どうも」
ニコリと貼り付けた笑みでジンに一礼する。
先程から俯き気味に服の裾を掴んで離してくれない彼女を一瞥してみると
「………」
絶賛、眉間に皺を寄せて不機嫌オーラを放っていた。
一瞬こちらを見やったリキュールがクツリと笑いを零す。
「……せいぜい愛想を尽かされないように
少しは大人になることだな、お嬢ちゃん」
その言葉に、出口に向かっていた彼女の歩みがピタリと止まった。
「余計なお世話よ、古ぎつねさん」
くすんだ青が、鋭く細められた。
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作者名:とみーさん | 作成日時:2020年9月4日 2時